遠藤周作とぼくの、魂の“深い河”

鵜飼清(評論家) ぼくが遠藤周作さんを特に意識し始めたのは、岳父の上総英郎(文芸評論家)に拠るところが大きい。上総本人から遠藤周作についての話を聞いたりしたことはあまりないのだが、遠藤作品の評論などを読むうちに遠藤周作に Continue reading


余白のパンセ 12 隣のおばあちゃん

わたしが生まれたのは、東京都新宿区西大久保の都営住宅でした。お産婆さんにお世話になったのよと、母から聞きました。昭和26年(1951年)のことです。 木造の住宅で、二軒続きでした。玄関同士で向かいの家に住んでいたのが、隣 Continue reading


対談 映画『桜色の風が咲く』 松本准平監督に聞く

鵜飼清(AMOR編集部) ●プロローグ 松本監督とお話する場所を高田馬場にさせていただいたのには、ちょっと理由があります。高田馬場というところには、ヘレン・ケラーと縁があります。大久保に日本ヘレン・ケラー協会があり、JR Continue reading


金はなくても花が咲く 生きてるうちが花なのよ

鵜飼清(評論家) 戦後77年目の2022年の夏は、猛暑が続くやけに暑い夏だった。コロナにロシアのウクライナ侵攻と、世の中はいやなことが続いている。安倍元総理の暗殺は、日本の戦後史を顧みなければならない課題をも残した形にな Continue reading


余白のパンセ 11 われ思うパスカルありと

井上洋治神父は1950(昭和25)年に東京大学で森有正さんの講義に出席していた関係からパスカルを卒論に選びました。 「ヨーロッパ近代が誕生していく17世紀の初めに生まれ、自然科学にこの上ない関心を示したパスカルは、僅か1 Continue reading


死者を死者として終わらせてはならない

戦争で街が破壊され、非戦闘員たちが爆弾の犠牲になっていく。ミサイル弾は容赦なくアパートや劇場、病院に打ち込まれ、女性や子ども、老人たちが犠牲になって亡骸が放置される。 街が戦場と化したとき、そこは地獄の様相を呈する。こう Continue reading


余白のパンセ 10 愛の人――高松凌雲

寒さが続く冬の一日、それでも少しずつ春らしい日差しを感じる頃、谷中霊園に足を向けました。高松凌雲という人のお墓へ行こうと思ったからです。ずいぶんと久しぶりの谷中墓地でした。最初に高松凌雲のお墓に行ったのはいまから42年前 Continue reading


余白のパンセ 9 微笑みながら咲いている花のように

私が大学を卒業した1975年は戦後最大の不況と言われた年でした。就職したくてもなかなか就職先が見つからないという状況でした。 私は大学の友人が自民党の代議士の秘書をしていて、ときどき議員会館の代議士の部屋に遊びに行ったり Continue reading