井上洋治神父没後10年記念 南無アッバの祈り


中村恵里香(ライター)

わたしが井上洋治神父の名前を初めて聞いたのは、中学3年生の時だったと思います。わたしの父(文芸評論家・上総英郎)が遠藤周作氏の仕事場でキリスト教作家の集まり霊の会(キリスト教芸術センターの前身、霊の会については、「遠藤周作氏と日本キリスト教芸術センター」を参照ください)から帰ってきた時だったと記憶しています。そのとき、父がなにを話していて、その名前が記憶に残ったのかは記憶が定かではありません。ただ、その名前がすごく印象に残ったのです。

高校生になると、上智大学で雑誌『世紀』を刊行していたキリスト教宗教研究所主催で、遠藤氏を中心とした講演会があり、父に勧められて毎週土曜日、学校が終わると急いで上智大学まで通っていました。その講演は、後に芥川賞を受賞する森禮子氏や阪田寛夫氏などキリスト教作家たちの講演でした。そのとき、井上洋治神父の講演もありました。そのときが初めての神父との出会いでした。当時、カトリック信徒でいることに疑問を持っていたわたしは、講演後、井上神父にその気持ちを率直に訴えたところ、神父は、穏やかな笑顔で、「神様は、いつも君に語りかけていることをいつか君も気づくだろうから、今は急ぐことはない」とおっしゃっていました。

日本キリスト教芸術センターのクリスマス会での井上神父

その後、何度も神父とお目にかかりましたが、深くおつきあいすることはありませんでした。その後、日本キリスト教芸術センターの事務のお手伝いをすることになり、毎月2回の勉強会に井上神父は毎回出席されるわけではありませんでしたが、出席されると、穏やかな笑顔で皆さんの話を聞いている姿が印象的でした。そして、年に何回かあるパーティでは、お茶目な姿を見せていました。いつしか、その神父の姿がわたしの心を惹きつけました。

そんな神父が亡くなられて10年、六本木の長良川画廊東京ギャラリーで「井上洋治没後10年記念 南無アッバの祈り」という展覧会があると聞き、足を運びました。

そこは、まるで、井上神父がその場にいるような世界でした。神父の祈りの世界がそこにありました。穏やかな笑顔とともに、人の話を聞いてくださる神父の姿が目の前に浮かんできました。

展覧会の案内は、こちらに掲載しています。今はなき井上神父の祈りの世界にぜひ足を運んでください。

 


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