毎朝の祈り


久山倶子

理由があって車通勤をしている。
東京の都心部へ向けて、毎日車を走らせる。
イチョウ並木を通り抜け、246に出るや否やすぐに曲がり、青山霊園に向かう。
この道が一番早いわけではない。
この道を通りたいからだ。

青山霊園は日本でも有数の人気の墓地なのではないかと思う。
手入れが行き届き、明るく、車通りも少ない。散歩やジョギングをする人も多くいる。
桜の季節にはどこで知ったのかと思うほど、朝から人が訪れる。
どんな天気の朝も気持ちよく感じられる都心には貴重な場所だ。
しかし、この道を通る理由はそれだけではない。
あるとき、ここにカトリック墓地があるのを知ったからである。

道の中ほどまで来ると、右側にキリスト教のお墓が立ち並ぶ。
その中に昔の司教たちや、麻布教会の墓があるのを見つけたのは数年前。
噂には聞いていたがすっかり忘れており、歩いて探しだした。

霊園を通り抜ける道は時速20キロに定められている。この速度制限がちょうどよい。
入り口に車が差し掛かるときから、アヴェ・マリアの祈りを3回、主の祈りを1回、栄唱を1回唱えると、ちょうど霊園を抜け、交通量の多い都道に出る。まるで静謐の世界から現実世界に戻った錯覚すら覚える。

毎朝こころを先人たちに向け、祈り、目の前を過ぎるときは一瞬のうちに十字を切り(または心の中で切り)、通り過ぎる。
感謝の気持ちと、永遠の安息を願う気持ち、
また自分自身のことだが、「いたらない私でも今日も一日勤めを果たせるように、また何かの役に立てるように見守りお導きください(ということを共に祈って下さい)」という気持ちを心の奥に秘めながら。
祈りの時間でもあるが、とても穏やかで満たされる時間でもある。
こころを整え、きょうも職場へ向かう。
どこにいても祈りやキリストの香りをまとえる日が来ることを願いながら。

 


毎朝の祈り” への1件のフィードバック

  1. 祈りの姿はいろいろですね。
    自分の祈りの場を、皆さん作っていることがわかりました。

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