いきること


あき(横浜教区)

今日お話しするのは、もしかしたらカトリックの信仰とは少し離れているのかもしれません。
70歳に近づき、生物としての終焉を迎えつつあるわたしにとって、「なんで生まれたのだろうか」「生きるとはどういうこと」「死ぬって怖い」などなど色々な妄想が沸き上がります。いままでも何度かそんな心の襞を投稿してきました。

何年か前から飲み仲間にはそんな心の内を吐露してきました。「死ぬのが怖い」「どこに行くんだろう」とても酒の話題とは程遠い話を延々と聞いていただきました。
本もたくさん読みました。
でも納得できる答えが見つかりませんでした。

今回、現在の自分なりに納得できた内容を、「いきること」「こころ」「やさしさ」の3回に分けて書いてみたいと思います。
長くなりましたらご容赦ください。
また皆さんも同じような思いを持つ方がありましたら、それぞれの思いや心の襞を教えていただければ嬉しいです。

 

「いきること」

わたしは毎朝5時半に愛犬の散歩に近所の公園を歩きます。
冬はうす暗い公園の灯の明かりに照らされながら。
そして今年のように暑い夏は、朝なのにこれでもかと思うくらいの湿度の高い照り返しの中、青い空を見上げ汗をぬぐいながら歩きます。

愛犬が6歳になった今、こんな朝の散歩は何時しか6年続きました。
散歩をすることで、季節の移ろいを肌で感じ、またすれ違いざまに毎朝の「おはよう!」という声が、それぞれの人の人生を感じることができます。

公園の椅子に座り一休み。
BGMをかけると愛犬は即座に膝に飛び乗り、一緒に朝の時間を楽しみます。そんなわたしの周りにはBGMに惹かれて何人かの人が集まり世間話に花を咲かせます。

夏は、アオサギが飛び、カワセミが見事な羽を広げ、ガビチョウがけたたましく叫びます。後ろでセミが、土から出た喜びを声に乗せて鳴く中、小さく聞こえていた秋の虫たちの声が、いつしか中心になって合唱しています。冬は渡る鳥の羽の一休みに立ち寄ります。
花も同じ。百日紅の赤い夏の花から徐々に曼殊沙華が咲くようになり、誰かが「拾ってきたぞう」と銀杏を袋一杯に持ってきます。

朝も少しずつ過ごしやすくなり、風が心地よく、朝焼けを楽しむ時間と変わっていきました。
そんな朝の移ろいを感じながらわたしは深呼吸して「生きている」とこころから感じることができます。
この時間には「死の怖さ」はみじんもありません。
わたしは「いきている」 そして木々や鳥・虫、暑くて地表に這い出してきたみみずも。
みんな生きている。
大きく育った木立も、この地球という環境の中で生きている。
いきることの素晴らしさを謳歌している。
そんな思いを持つことができます。

わたしはこの地球環境に思いを馳せます。
広く広く果てしれぬ広大な宇宙。
その中に小さな青い惑星、地球。
そこに数知れぬ生物が生を育んでいる。
人間はその生物の一種にしかすぎません。
この広大な宇宙に作られた奇跡のような地球という環境。
そこに神さまを感じます。
神さまが作られた世界の中で生きている。
何れはわたしも地球環境の中で素粒子に戻るでしょう。大きな命の源に帰ります。
神の御心のままに。

誰かが言っていました。
「よく『このままいくと人間が地球を壊すことになるだろう』というがわたしはそうは思わない。」「人間は環境を壊し互いに最終兵器を使用し死滅するかもしれない。しかしそれば人間という種族がこの地球という環境の中から消え失せるだけで、状況はかわれども、そこに地球は存在し生物は生きていくだろう」
人間が地球を壊すのではなく、単に人間という種が死滅するに過ぎないという言葉に真実を感じました。神さまはきっとそんな人間のありようをしっかりと見ているのでしょう。

「こころの時代」というNHKの番組があります。あるお坊さんが言っていました。
どんな生物も「食べて」「寝て」「排泄」し、「子孫をもうける」それが生物の本質です。生物は大きな生の中で役割をもって進化していく。
でも一個体を考えた場合、
「蟻が偶然に人間に踏まれて死を迎える。」
「木にいた芋虫が空から飛んできたカラスに咥えられる。」
その個体は突然死を迎えますが、それを予知することはできません。
ですから日々、その瞬間瞬間を生きる喜びの中で生き抜くのです。
人間も同じ。
毎日を前向きに生きる。

この言葉に、それが生物として生まれた人間の真理の一端であると感じました。
死んだ先のことを悩むのではなく、今をいきるという事でしょうか。
公園仲間の中でひとりの年配のおばさんの一言。
ある人が「どうしよう、どうしよう」と言っていた時の事。
「くよくよしてんじゃないよ!」
「今日楽しく納得して生きることしかないだろ!」と笑顔で言い切る自信に満ちた顔。
本じゃ得られない人生訓を感じました。

次回は「こころ」を書いてみたいと思います。

 


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