セント・ミハエル


石川雄一(教会史家)

29日にカトリック教会は聖ミカエル、聖ガブリエル、聖ラファエルの祝日を祝います。この祝日は英語では伝統的にMichaelmasと呼ばれており、英国では新年度の始まりを告げる日でした。今日でも、英国の大学の秋学期はミカエル学期(Michaelmas term)と呼ばれています。そんな大天使ミカエルの祝日がある月の「酒は皆さんとともに!」では、「サン・ミゲル」を紹介した先月に続き、ミカエルの名を冠するお酒を紹介したいと思います。

ラテン語やギリシア語由来のミカエルという名で知られる大天使は、英語ではマイケル、フランス語ではミシェル、スペイン語ではミゲル、ドイツ語ではミヒャエル、現代ギリシャ語やロシア語ではミハイルと呼ばれます。今回紹介する「モーゼルランド セント・ミハエル」は、ドイツのワインであるため、「モーゼルラント ザンクト・ミヒャエル」と呼ばれるべきですが、本記事では日本で販売されている英語読みの商品名に準拠します。

フランス、ルクセンブルク、ドイツにまたがる国際河川であるモーゼル川の流域は、古代ローマ時代からワインの産地として知られていました。イタリア半島からドイツにまで勢力を拡大したローマ人は、モーゼル川の河谷にブドウ畑を作り、ドイツにワイン造りを伝えたのです。2000年近いワイン生産の歴史のあるモーゼル地方は、ドイツ最古のワイン産地であり、蛇行する川沿いの急峻な斜面に位置するブドウ畑は風光明媚な観光地として今日の旅行者を魅了し続けています。この地域で育つリースリングというブドウ品種は、世界的に高い評価を受けています。

そんなモーゼル地方で1968年に誕生したのが「モーゼルランド」というブドウ生産者の組合組織です。20世紀末には4500もの生産者が加盟することになった「モーゼルランド」は、モーゼルワインの品質を維持しつつ、生産品を世界に売り出す役割を果たしています。そんな「モーゼルランド」が売り、三国ワインが輸入する「セント・ミハエル」は、やや甘口のリースリングです。リースリングというと甘いイメージが強いですが、「セント・ミハエル」は甘ったるくなく、果実味のある甘みと落ち着いた酸味のバランスが良いため、食前・食後酒としてだけでなく、食中酒としてもおススメです。ボトルの値段も1000円台前半とお手軽で、アルコール度数も10%とワインとしては低めなので、気軽に飲める一本です。


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