サン・ミゲル


石川雄一(教会史家)

2023年のAMORの年間テーマはアジアですが、アジアには日本からインド、アナトリアまで様々なビールの歴史・文化があります。先月に引き続きビールを紹介する今回の「酒は皆さんとともに!」では、東南アジアで最も売れているビールの一つである「サン・ミゲル」を扱います。フィリピンを代表するビールである「サン・ミゲル」は、東南アジアで最も有名なビールであるだけでなく、最も歴史のあるビールでもあります。

スペイン王フェリペ世にちなむ国名を持つフィリピンは、大航海時代にスペインの植民地となり、積極的な宣教によりカトリック信仰が根付いていきました。そんなカトリック国フィリピンで、スペイン系のドン・エンリケにより、189029日に創設されたのが「サン・ミゲル」醸造所です。醸造所はマニラのサン・ミゲル地区に開業され、創設日である29日が大天使ミカエルの祝日であったため、聖ミカエルのスペイン語読みである「サン・ミゲル」が会社の名前として付けられました。

1898年、アメリカ合衆国とスペインとの間に米西戦争が勃発すると、合衆国軍はフィリピンの独立運動を支援してスペインとの戦いを有利に進めようとしました。しかし、アメリカ合衆国が米西戦争に勝利してフィリピンを獲得すると、今度は米軍が独立運動を弾圧するようになりました。この米比戦争に勝利したアメリカ合衆国は、フィリピンを衛星国として支配するようになりました。こうしてフィリピンでビール好きのアメリカ人の影響力が拡大したため、「サン・ミゲル」の業績は飛躍的に向上しました。業績好調の「サン・ミゲル」社は、次第にビール醸造以外の事業にも業種を拡大していき、今日では金融、メディア、インフラからエネルギー産業に至るまで幅広いビジネスを展開するフィリピンを屈指の大企業として成長しました。公式サイトによりますと、「サン・ミゲル」社は、フィリピンの2022年のGDP7.6%を占めるほどの事業規模を有するフィリピン最大の大企業であり、「サン・ミゲル」ビールは世界のビールブランドでもトップ10に入るそうです。

スペインとアメリカ合衆国の支配を受けたフィリピンで発展してきたビールである「サン・ミゲル」は、アメリカや日本のビールのような飲みやすさと、スペインのビールのような味わい深さが両立した一杯です。また、通常の「サン・ミゲル」ビールである「ペール・ピルセン」の他にも、飲みやすさに重きを置いた「ライト」やアルコール度数の高い「レッド・ホース」、リンゴやレモンなどの味わいのある「フレイヴァード」、ノンアルコールの「フリー」など、様々な種類の「サン・ミゲル」ビールがあるので、皆様のお口に合う味わいを探してみてください。


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