『大使が語るジョージア: 観光・歴史・文化・グルメ』
ティムラズ・レジャバ、ダヴィド・ゴギナシュヴィリ:著、星海社新書、2023年
定価:1,540円 192ページ
石川雄一(教会史家)
今月のAMORはジョージアを特集し、歴史やワイン、服飾、映画といった様々なテーマに沿ってジョージアの魅力を紹介してきました。これらの記事を通してジョージアという国を少しでも知っていただけたのであれば光栄ですが、残念ながら、これらの断片的な記事は全て、まだジョージアに行ったことのない日本人が書いたものであるため、ジョージア人の筆による文ほど説得力が足りないかもしれません。そこで紹介したいのが『大使が語るジョージア: 観光・歴史・文化・グルメ』という新書です。
タイトルの通り、この本を書いたのは駐日ジョージア大使のティムラズ・レジャバ閣下です。著者は4歳で日本に移住し、早稲田大学を卒業後はキッコーマンで働いていたこともある大の知日家です。20万人以上のフォロワーがいるTwitterやYoutubeなどのソーシャルメディアを用いて精力的な情報発信をしています。共著者のダヴィド・ゴギナシュヴィリ博士は、慶応大学で博士号を取得し、現在は大使館で分析員として働いています。
日本に詳しいジョージア人2人が書いた本書は、ジョージアを総合的に紹介した本邦初の入門書といえるでしょう。三章から構成される本書は、副題が示すように、ジョージアの観光名所、歴史と文化、そして料理を日本人に親しみやすい例えを用いて案内しています。例えば、世界遺産都市ムツヘタは京都、黒海沿岸の都市バトゥミを神戸や横浜、カズベキ山を富士山に例えたり、ジョージアには沢山の温泉やおもてなしの精神があることを紹介したりして、日本人の親近感を呼びおこします。また、大手牛丼チェーン店「松屋」が期間限定で販売してから日本で流行したシュクメルリが実はローカルフードであるなど、意外な事実も書いてあります。
歴史や映画といったテーマの他にも、今回のAMORの特集では取り扱えなかった建築や料理、文学も紹介されています。特に料理は、食欲を誘うカラー写真と共に調理法も併記されており、実際にジョージア料理を味わえる工夫もなされています。小籠包のようなヒンカリ、国民的な漬物ジョンジョリから二日酔いに効くというスープのチヒルトゥマとハシまで、様々なジョージア料理が掲載されています。
今月の特集でジョージアに興味を持たれた方は、ぜひ『大使が語るジョージア: 観光・歴史・文化・グルメ』を読んで奥深いジョージアの魅力に触れてみてください。実際にジョージアへ旅してみたくなるでしょう。一度でもジョージアに行くと、その魅力の虜になって再訪したくなるといいます。また、中・長期滞在者も多く、移住してしまった人も少なくないようです。今回の特集と本書を通じて、ジョージアが馴染みの薄い遠い国という印象が変わり、実は様々な意味で近い国であると感じていただければ嬉しいです。
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