戦争の記憶を語り継ぐということ――ナチス・ドイツを描いた映画


中村恵里香(ライター)

第二次世界大戦を体験した人たちが亡くなっていく中で、戦争の記憶をどう残していくのかはさまざまな形で問題視されています。「映画で発見」の中でも、映画化されたナチス・ドイツの映画を数本取り上げてきました。これまでは、いかにナチスが無謀なことをし、どれだけひどいことをしたのか、そしてそのナチスとどのように戦い、敗退させていったのかという映画が多かったように思います。

ところが、最近は傾向がちょっと変わってきているのではないかと思います。もちろん最近でも同じような作品はあります。たとえば、2019年に公開された『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』、2018年公開の『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』、2020年公開『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』などはこれまでの傾向と同じような作品です。

今回は視点を変えて戦争の悲惨さだけでなく、新しい形で戦争の記憶を残そうとしている傾向をご紹介したいと思います。

ユーモラスにナチスを描いたものに、2020年にご紹介した『ジョジョ・ラビット』があります。青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に参加した10歳のジョジョがアドルフの励ましで、乗り越えていくという物語です。

もう1作が『お名前はアドルフ?』という作品です。名前はその人の生涯を決めるものです。その名前を巡ってのお話です。哲学者で文学教授のステファンと妻エリザベスは、弟トーマスとその恋人、幼なじみの友人で音楽家のレネを招いて自宅でディナーを楽しむ予定でいました。恋人が出産間近なトーマスは、生まれてくる子どもの名を“アドルフ”にすると言い出します。ステファンはアドルフ・ヒトラーと同じすると聞き、気は確かかと確認しますが、トーマスは本気も本気です。友人レネも巻き込み、5人の大論争が始まり、家族にまつわる最大の秘密まで暴かれ、名前の話は、ドイツの歴史やナチスの罪についての話にまで発展していきます。

この2作は、笑いの中に歴史を描いた作品です。

次に『名もなき生涯』と『ある画家の数奇な運命』です。すでにご紹介したものですが、実在の人物を描いた作品です。戦闘シーンはほとんどなく、第二次世界大戦のさなか、戦争と自分の生涯に苦悩する人を描いたものです。

そして、戦後の物語があります。『復讐者たち』は、戦後、ホロコーストを生き抜いたユダヤ人の物語です。

最後に新しい試みになるのではないかと思う作品『ブルーム・オブ・イエスタディ』は、現代の物語です。ナチスの戦犯を祖父に持ち、家族の罪と向き合うためにホロコーストの研究に人生を捧げるトトと、ナチスの犠牲者となったユダヤ人の祖母を持ち、親族の無念を晴らすために、ホロコーストの研究に青春を捧げるザジの物語です。この作品は、過去を嘆くだけの時代に終止符を打ち、未来を生きる世代のために、作られた愛の物語です。

ただ、過去を嘆き、暗い歴史を暗いままに描くのではなく、視点を変えて、ユーモラスに未来に向けたメッセージになるような映画がこれからの中心になるのではないでしょうか。

戦争を知らない世代が描く、戦争の記憶の伝承がどのようになるのかがひとつのキーワードになるかもしれません。

 


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