アート&バイブル 89:聖家族―エジプト避難途上の休息


グイド・レーニ『聖家族―エジプト避難途上の休息』

稲川保明(カトリック東京教区司祭)

アート&バイブル21「マリアの教育」と、65「聖ヨゼフと幼子イエス」で紹介したグイド・レーニ(Guido Reni, 生没年1575~1642)の作品です。

レーニは、17世紀前半、バロック期のイタリアで活動しました。アンニーバレ・カラッチらによって創始されたボローニャ派に属する画家で、ラファエロ風の古典主義的な画風を特色としています(その生涯についてはアート&バイブル21をご覧ください)。

彼は、1601年頃からローマで活動したのち、1614年、生地ボローニャへ戻ります。教皇や貴族らの注文を受ける華やかな生活よりも、故郷での自由な生活を望んだためといわれています。以後、没年までは短期間の旅行を除いてボローニャを離れず、制作と後進の指導に努めました。優美な女性像を多く描いたレーニは、実生活では女性嫌いだったといわれ、生涯独身を通したとのことです。この作品ではラファエロ風の優雅さと色彩、そしてカラヴァッジョ的な画面の構成が見られます。

 

【鑑賞のポイント】

グイド・レーニ『聖家族―エジプト避難途上の休息』(1637年 ポーランド ヨハネ・パウロ2世美術館 所蔵)

(1)エジプトへ避難する途中の聖家族が休息していると天使が現れて、幼子のために楽器を奏でるという構図は、カラヴァッジョが描いています。このレーニの作品にもリュートのような楽器を演奏する天使と歌う天使の姿が描かれています。

(2)画面下の右隅にはもう一人の幼子が羊を抱いていますが、これは足元に細い枝で作った十字架、そこにリボンのような布が巻かれており、これは幼子の洗礼者ヨハネです。天使たちの頭上には書物のようなものを開けている聖ヨセフの姿が描かれています。書物を手にしているヨセフの姿は珍しいと思います。

(3)よく見ると、イエスは音楽を聞いているというよりも、手に持っている糸の先に結ばれている虫を見ているようです。日本の「わらしべ長者」という昔話に、ハチかアブをわらしべに結わえて持っていると、それを子どもが欲しがって、みかんと交換することになり、さらにそれがもっとよいものと交換されることになるという話があるのを思い起こさせます。いずれにしても、虫で遊ぶ幼子イエスを描く絵は大変珍しいものです。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

4 − three =