コロナ禍のベトナムから


聖パウロ修道会 Br. 洗川修一

現在ベトナムからの一時帰国中ですが、自国へ帰りほっとしている気持ちと新型コロナウイルス感染拡大が止まらない日本の状況を考えると複雑な心境です。

昨年の2月一時帰国し2週間後にベトナムへ戻った時点では、もうすぐ収まるだろう、翌月は大丈夫だろう、今度こそ大丈夫だろうと何度期待したことでしょうか。

そしていよいよ日本に帰らなければならない事情ができて、やっとの思いで日本に帰ることが出来たという安堵感でしたが、今度はベトナムに戻ることが出来ない焦りともどかしさを感じながらの日々が続いています。

ベトナムでのコロナ感染は当初から抑えられていて、現在はほぼ通常の生活に戻っている状態です。2021年1月17日現在のデータによると、感染者発生時からの累計は1537人、死者35人と信じがたいほど少なく、それでいて水際作戦が厳しく敷かれているのが功を奏しているのかもしれません。

昨年12月中旬の今回の帰国はクリスマスを迎える前でしたが、聖堂内も外側も飾り付けが日を追うごとに華やかさを増していました。飾りの中心は馬小屋の中の聖家族とその上に置かれている大きな星が特徴的ですが、電飾をふんだんに使っての飾り付けは、教会に限らず個人宅の最上階にも飾られていて、夜には一段と輝きが増してクリスマスを迎える雰囲気が溢れていました。

ベトナムの人口が約9500万人に対してカトリック信者は約700万人ともいわれ、若者が目立つ活気にあふれた教会という印象です。教会ごとに聖歌隊が組織されていて指揮者や楽器演奏者も揃っているようです。信者さんはモニターに映し出される歌詞を見ながら歌うという形で、聖歌集は持っていないのが普通のようです。教会内部も日本のカテドラル級の大きさなので音響設備が整えられていて、それを通して聖堂いっぱいに歌声が響き渡るわけです。

またそれに際立っているのが、祭壇周りに飾られている躍動感あふれる大小の生花です。花に係るお金はとつい思ってしまうほどです。また、十字架やご像、み言葉が書かれている垂れ幕、年ごとのベトナム教会の標語とロゴマークなどにも照明が当てられているさまは日本とは随分違う雰囲気です。

ベトナムのサイゴン大教会

そのような環境の中で私たちが生活している小さな共同体は、ベトナムの最大都市であり、経済都市であるホーチミン市にあります。ホーチミンシティー空港からスムーズに行けば車で15分くらい、市の中心地へも30分程度です。そのベトナム南部ホーチミンに派遣されてもうすぐ2年になりますが、日本行きの準備をしている4人の志願者たちと2人の日本人ブラザーが共に生活しています。共同体には現在司祭がいないため所属する小教区のミサに毎日参列し、教会の祈りや聖体礼拝は共同体の聖堂で行う状況です。

教会活動に関して言えば一見何事もないように思うのですが、社会主義国家ということを忘れてはなりません。特に外国人である私たちは教会の中でも言論は注意しなければならないと言われています。ベトナムに共同体が出来て9年目になりますが、サイゴン教区(ホーチミン教区と言わず旧都市名のままである)の認可はまだ得ておらず、それを得るためにはいくつかの条件を満たす必要があり、ベトナム人の終生誓願者数名がいることも条件の一つです。そのためにはあと10年近く待たなければならないようで、教区の認可の次に政府の認可を得るには並大抵のものではないようです。

経済都市として発展し続けるホーチミン市はコロナ禍にも関わらず、目まぐるしく変わっていっています。日本企業の進出も今後多くなると言われ、日本企業が携わっていて今一番待たれているものにホーチミン初の地下鉄第一号線があります。昨年秋には使用する車両が日本から運ばれ、今年末か来年には開業の予定だと言われています。

このように大きく変わりつつあるベトナムの社会と教会のなかにあって、私たちの修道会はどのような歩みをしていくのか、まだまだ手探りの状態ですが、希望を失わず歩んで行ければと思います。

 


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