アート&バイブル 53:玉座の聖母子と五人の聖人


ラファエロ『玉座の聖母子と五人の聖人』

稲川保明(カトリック東京教区司祭)

1月1日、神の母聖マリアの祭日によせて、ラファエロの作品を鑑賞しましょう。ラファエロについては第38回で生涯と作風を紹介し、いくつかの代表的な聖母・聖母子画を例示して解説していますのでご覧ください。

そこでも言及したように、その当時まで、聖母・聖母子が威厳のある存在として描かれていたのに対して、ラファエロは実在する多くの女性をモデルとして、身近で温かみのある聖母・聖母子の姿を描いています。同時代のありのままの姿を聖母に見立てていると同時に、一人の女性ではなく様々な女性のよさを自分の中で融合し、調和させて聖母の姿としているのではないかと思われます。

今回の作品は、「聖なる会話」という画題にも該当するもので、第39回でパルマ・イル・ヴェッキオの「聖なる会話」を取り上げた際に参考作品として例示しています。この画題に関するそこの解説もご参照ください。

 

【鑑賞のポイント】

ラファエロ『玉座の聖母子と五人の聖人』(祭壇画テンペラ、172×172cm、1503~05年、ニューヨーク、メトロポリタン美術館所蔵)

(1)ラファエロのこの作品は、1503~05年の間に描かれたものと推定されています。彼の聖母子の絵のターニングポイントはダ・ヴィンチとの出会いでした。それがあった後の1506年に描かれた『ひわの聖母』と『大公の聖母』には、グレードアップしたラファエロらしさが輝き出ています。それに比べると、この作品の聖母子はペルジーノ的な甘美さが残っており、静寂さが強く感じられます。

(2)特に心惹かれるのは、幼子イエスと幼子洗礼者ヨハネの姿の愛らしさです。他の作品とは違い、洗礼者ヨハネは、マリアの左側から近づいていこうとしており、そのヨハネを幼子イエスが十字を切って祝福しています。

(3)玉座の傍らには鍵と聖書を持つペトロ(向かって右端)、剣と聖書を持つパウロ(左端)、その後方には二人の女性(棕櫚の枝を持っており、殉教者であることを示しています)が立っています。

(4)その頭上には天を表す半円の中に、父なる神が二位の天使を従えて、地上にいる聖母子と聖人たちを祝福するように手を掲げています。

 


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