Doing Charity by Doing Business(12)


山田真人

前回は、現代の福音宣教をカトリック高校で学んだ生徒が、NPOの活動を通して大学に進学してからも継続的に社会司牧的活動に関わってくれている姿を見てきました。その中で、識別というキーワードを用い、選択の積み重ねによって人間が磨かれ、神への信仰も更新されていくことに触れました。今回は、それを企業のレベルで考え、カリスマという言葉と経営学者のピーター・ドラッカーの「選択と集中」をキーワードに深めていきたいと思います。教会が企業やそれに関わるNPOなど、どんな社会との関わりの中で福音宣教ができるのかを、考えていきます。

教皇フランシスコ賞、授賞式時のNPO法人聖母の学生ボランティア

まず、経済学者で初めてNPOの経営学について研究したピーター・ドラッカーの「選択と集中」という言葉について考えていきます。

選択と集中とは、「力を入れる製品・サービスを一つに絞ること」ではなく、「何を軸に事業を運営するかをはっきりさせる」ことだと、ドラッカーは強調しています。この説明を聞くと、私たちが一般的に考える企業の選択とは意味が異なるように感じます。選択することは、単なる一つのサービスということではなく、軸を何にするかを決めるという点で、経営学が哲学であり実存的な問いでもあることが分かります。それを実行することで、「集中」をすることができるということかもしれません。

でいう「軸」という言葉をもう少し深掘りするために、一冊本を紹介したいと思います。それは、『本当に大切なことの見つけ方』(マツダミヒロ著、総合法令出版、2024年)です。マツダさんはユニークな肩書で、「質問家」と名乗っています。この本の中では自分に質問をしていくことで、優先準備を立て「軸」を見つけていくことを、重視しています。ドラッカーのいう「集中」も、この作業の繰り返しを通して、どれを選択して集中すべきかに会社全体を促していくことだと指摘しています。

次に、カリスマという言葉について考えていきたいと思います。『岩波キリスト教辞典』によれば、カリスマというギリシャ語は、新約聖書では17回使われていて、そのうち14回はパウロが用いており、初期の教会共同体が「教会の信者個人ないし団体に固有の賜物として与えられ、しかも教会への貢献という方向性を持っている」ものとして使用していたとのことです。例えば、第一コリント人への手紙12章8節〜10節では、「異言」、「預言」、「いやし」の賜物が挙げられています。この賜物を教会への貢献として生かすためには、物語的アプローチが必要だと教皇フランシスコは『識別』(ペトロ文庫)に集められた講話の中で語っています。つまりそれは「この決断に至るにはどのようなきっかけがあったか」、「どんな人や出来事に動かされたのか」を確認することです。

このように、自分の軸を持ち、物語的なアプローチで決断をしていくことが、神との対話であり、祈りに繋がってくることが分かります。その形式の一つが、NPO法人という組織形態です。NPOはその代表を始めとした中心人物が、物語論的に決断をしていき、自分の人生、そして他者との関わりの中で軸にしたいことを決めていきます。

著者(右)が代表を務めるNPO法人聖母は、寄付型コーヒー販売に事業を集中化し、ソーシャルプロダクツとして商品が表彰された

著者が代表を務めるNPO法人聖母では、学校給食による飢餓の撲滅と教育の平等の実現、それを実施する上で日本の教育現場、企業ビジョンとも繫がりながら、日本のチャリティ文化を育成していくことを軸にしています。決断の連続の中でもぶれない軸を持ち続けることで、団体としてのカリスマが磨かれていきます。そのカリスマの姿は、教会の奉仕とも通じる部分があり、それを団体の中で体験してくれる学生を増やすことが、カトリック教育にも繋がってくると感じています。

以上、企業体の一つであるNPOと教会の持つべきカリスマの姿が繫がり、その実践が学生の教育に繋がることを見てきました。最後に、第二バチカン公会議の時期に有名な教会論学者、ハンス・キュンクの『教会論(上)』の言葉を引用します。「確かに教会は個人から成っている。しかし、教会が個人という観点から考察の対象とされうるのは、まさにその個人も、教会の成員としての神の視点から見ていくことができるからであり、その限りにおいてのことなのである」(P.202)と書かれています。第二バチカン公会議以降、信徒使徒職も大きく見直されてきましたが、まさにキュンクの言う「個人」が受けて内面で成長していくのがカリスマであり、それが育ち集まる人ができることで、企業などの法人にもなっていきます。これが、教会の組織的な宣教の形態になっていく日も、将来来ると思います。

 

山田 真人(やまだ・まこと)
NPO法人せいぼ理事長。
英国企業Mobell Communications Limited所属。
2018年から寄付型コーヒーサイトWarm Hearts Coffee Clubを開始し、2020年より運営パートナーとしてカトリック学校との提携を実施。
2020年からは教皇庁、信徒、家庭、いのちの部署のInternational Youth Advisary Bodyの一員として活動。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

seven + 8 =