特集90 新しい“学校”の芽生え


選択肢のたくさんある社会を待ち望む

近年、不登校の児童・生徒が2012年から絶えず増加傾向にあり今や30万人に及ぼうとしているなか、今、学校教育のあり方が転換期にあると言われます。今年の1月27日「NHKスペシャル 話そう!“学校”のみらい 不登校30万人から考える」という番組が放映されました。第1部では、韓国の「代案学校」(オールタナティヴ学校)が国の正規の学校として認可されつつある様子、日本のフリースクール、一斉授業の割合を減らして生徒の自主学習の場を広げようとしている取り組み、フランスにおける「エデュケーター」という生徒に寄り添い、その声を聞きケアをする教育支援専門職の取り組みが紹介されていました。第2部は座談会の形となり、自ら不登校を体験したインフルエンサーや、一般学校とは違う民間のスクールを経験した現在の大学生、子どもが不登校を経験したという母親、教育行政に関する専門家、文部科学省の初等中等教育局長などが登場して語り合うという構成でした。全体を通じて、学校の現状を考えさせるさまざまな視点を提供してくれていると思います。

戦前の学校教育から戦後の民主主義教育への脱皮が大きなテーマだった時代をあとにして、塾というものが学校とは別な児童・生徒の学習の場として定番化していった時代、世の中全体で価値観や関心傾向の多様化が進み、少子化となり、個々人の多様なあり方への配慮が共通な課題として意識化されつつある時代・社会になり、その中で学校という教育制度そのものの自己脱皮が求められている現在です。一律のカリキュラム構成や一斉・必修授業中心のあり方、点数式の成績評価・偏差値重視といったことが主に再検討されるべきこととして挙げられますし、ドラマや劇映画でも、日本の場合が、学校という場での経験が人生を決定づけ、少なくも大きな影響を及ぼしていくというストーリーがさまざまに語られます。“学校”の未来を問いかける営みが深められつつある現在です。

カトリック教会、キリスト教諸教会全体は、この国の学校教育の歩みに対して大きな役割を果たしてきました。今も果たしているにちがいありませんが、その中でも、そうした学校と教会とのかかわり、日本社会とのかかわりは激変しつつある現在で、それ自体、注目に値するものです。ヨーロッパの中世、近世、近代の中でそれら教会的な教区事業が果たした役割と環境についての理解も、今後のそれらの役割や学校教育そのものを考えていくための資料となっていくでしょう。

このような問い直しの中で、一人ひとりが実際に体験した学校生活というものやその時の思いなどを聴き合いたいという思いにかられます。それは無尽蔵な振り返り、取材・聴き取りの作業となっていくでしょう。ほんのその一部でも、このAMORという場で進めてみたい、というのが、この特集に絡めての寄稿募集の意図です。

4月という新学年度の始まりをきっかけとして そうした学校教育の新生を考えつつ、ある時代の学校にあったポジティヴ、ネガティヴな思い出を探ることのなかにも、新しい“学校”の芽生えがあるのではないか、そのような意味で体験エッセイ、また、実際に今、新しい“学校”への取り組みをしている事例、その中での多様性を育てる関心の引き出し方などへの考察、新しい学校の取り組みを取り上げるドキュメンタリー映画の情報などが盛り込まれています。

テーマの大きさとその抱負に対して、ある難しさがつきまとうのか、記事は少数ですが、それぞれ、このAMORでの探求の方向を示していると思います。この特集を機会に、継続的なエッセイ・コーナーにして、募集も続けていきたいと思います。新しい“学校”の芽生えを、過去に、今に、これからに、問いかけていく旅をご一緒していただければ幸いです。

 

「極彩色の孤独」と美術

「学校」の枠を越えて、自分らしい学びの場

相手の「味」を伝える場―自分と他者への愛を育める学校

我が人生の黄金時代

学校に関するドキュメンタリー映画

余白のパンセ 3 わが青春譜 全寮制高校での3年間(再掲)

東京サレジオ学園での初聖体(再掲)

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

20 − 18 =