Doing Charity by Doing Business(10)


山田真人

前回の記事では、生徒たちの学びが「自分ごと―あなたごと―社会ごと」という形で、1人称から3人称に変わっていく進化について触れました。その段階を経るごとに複数形となり、人数を増やしていくことで、他者を巻き込み自分が社会の中で徐々に役に立てる存在であることに気づき、自己肯定感を伸ばしていけることについて述べました。今回の記事では、引き続き光塩女子学院の取り組みについて考えると同時に、その複数形にしていく取り組みの具体例として、サレジオ学院中学校・高等学校のカトリック研究会の活動について触れていきます。それを通して、課外活動がカトリック学校に通う生徒の社会性を養っていく姿を考えていきます。

サレジオ学院高等学校のフェアトレードコーヒープロジェクトメンバー

サレジオ学院は、NPO法人せいぼとともに2020年9月から活動をしています。もともと、フェアトレード商品を扱いたいという希望から連絡を頂き、関係性が始まりました。高校生にとっては、商品を学校で扱い、経済活動を行うこと自体が大きな社会性への窓となりました。2023年になると、彼らはさらにそのフェアトレード商品がどのように日本に輸入され、ビジネスとなっているかについても、関心を持つようになりました。そこで、NPO法人せいぼがSDGsパートナーとして提携しているアタカ通商株式会社を実際に訪問し、企業の持つビジョンについて聞く機会を作りました。これによって、なぜ企業がフェアトレードに関する産業に関わることにメリットがあるのか、SDGsに協賛するのかについて理解を深め社会経済へと足を踏み入れることになります。

こうした活動をする中で、サレジオ学院は自分たちだけでこの活動を留めておくのではなく、他の人々にも広めていくことが必要だと考えるようになりました。それは、カトリック研究会が活動を通して福音を広めていくことの目的とも重なります。彼らは全国のカトリック学校に対して、直筆の手紙を書いて送り、それぞれの学校の建学の精神を基にしつつ、マラウイの貧困課題について学ぶことや、支援活動において協働することを呼びかけています。

サレジオ学院中学高等学校、光塩女子学院中等科の生徒のアタカ通商株式会社の訪問

ここで、光塩女子学院の活動に戻ろうと思います。前回の記事では、光塩女子学院の生徒たちが自分でコーヒーのパッケージをデザインし、それをカトリック高円寺教会のバザーで実際に販売したことを紹介しました。彼女たちは、サレジオ学院の生徒たちと同じく自分たちの学びを内部に留めることなく、教会共同体に広めることで、世代間の交流、福音の実践化と繋げました。さらに、バザーには現在NPO法人せいぼと同じく活動を実施しているカリタス女子高等学校の生徒を招くことで、学校というつながりで異なる地域の生徒同士の交流にもなり、教会と若者との接点も広がると考えております。

以上のように、「自分ごと―あなたごと―社会ごと」が複数形になると、「自分たち」つまり「学校の生徒たち」が、他のカトリック学校という同じ枠の「他校の生徒たち」を巻き込み、他の共同体に属して同じミッションを共有する「社会」の一部、「教会共同体の人たち」を巻き込んでいくことに繋がります。こうした取り組みが増えていくことで、教会論的にも新しい時代が、若者と共につくれることを期待しています。次回の記事は、教会論の歴史に少し触れつつ、大学生との取り組みを紹介していきます。

 

山田 真人(やまだ・まこと)
NPO法人せいぼ理事長。
英国企業Mobell Communications Limited所属。
2018年から寄付型コーヒーサイトWarm Hearts Coffee Clubを開始し、2020年より運営パートナーとしてカトリック学校との提携を実施。
2020年からは教皇庁、信徒、家庭、いのちの部署のInternational Youth Advisary Bodyの一員として活動。

 


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