今回は西アジア、レバノンという国に注目してみます。なぜ? そんな思いに駆られるかもしれません。日本の歴史とはほとんど関係のなかった国の一つといえる国です。単純に、教会仲間にレバノンの方がいること、その方の母国について、家族について、風土について聞いてみたいと思ったのが大きな動機です。
そして、少しでも調べ始めると、レバノンがキリスト教の歴史の中でもユニークな位置にあって、その歩みを刻んでいることがわかってきます。マロン派カトリックがその代表ですが、そのほかにもさまざまな東方典礼カトリックの諸教会、正教会などが共存し交流しており、それだけではなく、アラビア語など、アラブの文化やイスラム教の影響も自分たちの中に取り込まれています。この独特な宗教事情に配慮した国家体制をとっていることも知られています。
シリア、トルコ、イスラエル、パレスチナといった国や諸勢力の影響の中にあるレバノンはたびたび深刻な危機に陥り、内戦をも生き抜いています。調べれば調べるほど、日本とはかけ離れた世界があると感じざるをえません。
とはいえ、そこには、普通の日常を生きている人々、家族があり、豊かな生活文化があります。ワイン、料理、映画を通じて覗くことのできる、とてもカラフルな世界です。それらを通じて、レバノンというアジア西端の世界と人々の心に近づこうとするとき、翻って、真反対の東端の日本の、きわめてユニークなありようも問いかけられてきます。
日本では、キリスト教もイスラム教も圧倒的少数派で、歴史的伝統の深い神道、仏教、そして近現代に成立した種々の新宗教などがあっても、全般的には“無宗教”の雰囲気の中に包まれている現実をどう考えたらよいのか。戦争や内戦を免れてきた現代日本のこの“平和”は何の力、どんな国際関係のもとにあってのものなのか、この国、社会、宗教の暗黙の前提状況が、レバノンと反対照的に、浮かび上がり、意識化されてくるのです。
そのような問いも心に留めての、レバノンとの出会い、その歴史、自然風土、文化、宗教に対する学びの事始めです。
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インタビュー:レバノンとは、どのような国ですか? ――お国柄、歴史、キリスト教について――
カトリック教会のレバノンへの眼差し~~シノドスと教皇メッセージの動向~~