PLAN 75


世界でも最も少子高齢化が進んでいる日本で、少子化の問題と高齢化社会の問題がさまざまな形で議論されています。そんな中で、高齢者問題に一石を投じる映画「PLAN 75」がまもなく公開されます。

少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本で、超高齢化問題の解決策として、政府は新しい社会制度〈プラン75〉の施行を可決します。75歳以上の高齢者に自らの“最期”を選ぶ権利を認め、支援する制度です。

新制度のニュースが流れる中、ホテルの客室清掃員として働く78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)は夫と死別し、子どものいない一人暮らしです。古い団地に帰ると、会話する相手もおらず、夕飯を済ませて1日を終えます。職場では同年代の女性たちと助け合って寂しさや不安をまぎらわせていました。

市役所の〈プラン75〉申請窓口で働く岡部ヒロム(磯村勇斗)は、訪れる高齢者に1人あたりの所要時間30分の中で、笑顔で丁寧に制度を説明します。笑顔で説明はしていますが、相手の顔もほとんど見ずに業務をこなしていきます。

フィリピンから単身で来日した介護職のマリア(ステファニー・アリアン)は幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の〈プラン75〉関連施設に転職します。利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて作業に臨む毎日です。

ある日、同僚の稲子(大方斐紗子)が勤務中に倒れたのを機に、ミチは退職を申し渡されます。さらに終の棲家と思っていた団地の取り壊しが決まり、ミチは新居と仕事を探しますが、高齢と無職を理由に決まらず、徐々に追いつめられていきます。

ヒロムは制度の申請に来た伯父の岡部幸夫(たかお鷹)と再会します。近親者ゆえ担当を外れたヒロムは甥として、孤独な幸夫と向き合うようになります。

一方、ミチは追い詰められ、〈プラン75〉を申請します。コールセンターから定期的なサポート電話で、彼女は孫といってもいい年齢の若い担当者・成宮瑶子(河合優実)を「先生」と呼び、毎回15分の会話を楽しみにしています。やがて2人は実際に対面し、さらに打ち解けていきます。

今まで〈プラン75〉に何の疑問も持たずにいたヒロムと瑶子は、相手の顔を見て交流することで、年齢で命の線引きをする理不尽さを感じ始めます。

電話口で普段通りに明るく話したミチは「いつも先生とおしゃべりできるのがうれしかった。本当にあ りがとうございました」と電話を切ります。

最期を迎える朝がやって来ました。車で迎えにきたヒロムの前に、こざっぱりと身なりを整えた幸夫が現れます。

ミチは慣れ親しんだ風景を見つめてから、一人バスに乗り、施設に向かいます。

なぜ、75歳で自分の生死を決めなければならないのか、そして、ミチはそのまま死を迎えるのか、ヒロムはどう行動するのか、映画館に足を運び、見てください。

監督の早川千絵さんは、「『つらくて生きていけないので死にたいです』と言う人に、死ぬ方法を差し出す社会がよいのか。『助けますからみんなで行きていきましょう』と答える社会がよいのか。絶対に後者の世界に自分は生きていきたいと思ったんです」。この映画を通して、社会に迷惑をかけるなという圧力がひどい社会から「想像することをやめてしまう恐ろしさに気づくきっかけに、なればいいなと思います」と述べています。

高齢化社会に中で、生きるとは何か、死を迎えることに対する姿勢に加え、助け合いと想像への提言が描かれています。

中村恵里香(ライター)

 

 

617日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

公式ホームページ:https://happinet-phantom.com/plan75/

 

スタッフ

監督・脚本:早川千絵/撮影:浦田秀穂/照明:常谷良男/録音:臼井勝/美術:塩川節子

キャスト

倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実ステファニー・アリアン大方斐紗子、串田和美

製作:ハピネットファントム・スタジオ、ローデッド・フィルムズ、鈍牛倶楽部、WOWOWUrban Factory Fusee/企画・製作:ローデッド・フィルムズ/製作協力プロダクション:SS工房/配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ

©2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee

 

 


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