屋根の上に吹く風は


皆さんは学校が好きでしたか? 私は小学校は大好きで、本当に通うのが楽しみでしたが、中学、高校はいじめにあうなど、あまり好きではありませんでした。校則や決まり事に縛られる中学、高校時代は本当に通うのが苦痛でした。自由に自分たちが考える学校はないものだろうかと思っていたのですが、そんな学校があります。そんな学校を紹介してくれる映画『屋根の上に吹く風は』を紹介します。

鳥取県の山間の町、智頭町にある“新田サドベリースクール”は、授業は行われません。子どもたちはゲームや屋根登りに夢中です。子どもたちのやりたいことを一番に尊重しています。この学校で一番大切にしていることは、ルール作りから全体雲煙まですべてに子どもたちが携わり、自分で考え判断し、解決する力を身につけていけるように運営されています。学年別授業もなければ、先生といわれる人もいません。子どもたちをサポートする人も“スタッフ”と呼び、子どもたちが選挙によって選びます。今日、一日何をするのかもすべて子ども自身が決めていきます。

何をするにも自分たちで決めなければならないので、最初は楽しいのですが、何もしなければただ退屈なだけです。退屈を口にする子どもたちに対して、スタッフは、子どもたちが自ら生み出す力を信じ、「何でもやってみたらいいんよ」、「みんなで話し合ってみたら」とそっと背中を押します。

勉強もせず、ただ遊んでいるだけに見える子どもたちに対して近隣の人々の目は、いぶかしげです。親たちも子どもたちを信じて入るものの、時折不安がよぎっているようです。

みんなのお兄ちゃん的存在の“ひな”は私立中学二年生へ編入を目指して勉強を始めます。また、サドベリースクール開校に尽力したメンバーの一人の子、“がじゅ”は、難関私立中学への受験を目指し始めます。また、スタッフ“さとちゃん”の娘“りお”は、喫茶店をやってみたいと提案します。そんな子どもたちをスタッフたちは関わりすぎず、一定の距離を保つようにしながら後押しをしていきます。

それぞれにさまざまな問題を抱えつつ、皆が一歩ずつ進んでいく姿は、心打つものがあります。私たちが考える学校とはかけ離れた存在ですが、ここには個性を伸ばし、考える力を養う子どもたちの姿があります。今の学校制度とはまったく異なる存在ですが、ここには不思議な魅力があります。子どもたちが感じた屋根の上に吹く風は、どんなものだったのでしょう。ぜひ自由闊達に活動する子どもたちの姿を映画館に足を運んで観てください。ご覧になった皆さんは、きっと何か売るものがあるはずです。

中村恵里香(ライター)

 

2021年10月2日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開予定

公式ホームページ:https://www.yane-ue.com/

 

スタッフ

監督・撮影・編集:朝ださかえ/プロデューサー:日笠昭彦、西村陽一郎

出演

ナレーター:玉川砂記子/新田サドベリースクールの子どもたち、スタッフ、保護者、新田地区の人々

 

製作:2021年、108分/日本/配給グループ現代/©SAKAE ASADA

 


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