正教のクリスマス


易奥朽子(イオフ・シ/日本正教会信徒)

教会のクリスマスというと、カトリックのクリスマスをご存じの方は多いかと思います。クリッペ(イエス様が誕生したときのシーンを模した馬小屋の飾りのこと。プレゼピオとも言います)、クリスマスツリー、盛大なミサが真っ先に思い浮かびませんか? 大きな教会の近辺に職場や住まいがある方、「我こそはソフィヤの学徒である」という方、欧米へよく行かれる方など、実際にご覧になられた方はよりリアルに感じるのではないかと思われます。

しかし、私の所属している日本正教会のクリスマスは少し趣(おもむき)が異なります。みなさんは正教のクリスマスをご存じでしょうか? カトリックよりもなじみが薄く知名度がかなり低い教派なのでイメージすらわかない、という方が多いのではないでしょうか。そこで今宵は正教のクリスマスをご紹介する船旅へとみなさんをご案内いたします。

 

1.正教ではクリスマスは一年で一番大切なお祝い日ではない

みなさんはこれを聞いてどう思われますか? おそらくほとんどの方はビックリされたかと思われます。では「正教で一番大切なお祭りって何?」と聞かれれば、正教会の神父様は「復活大祭(イースター)」と答えます。なぜか? それは「ハリストス(キリスト)が十字架上で死んだのに3日目に復活した」という、この事実こそがキリスト教信仰の核だからです。

もちろん、これはキリスト教のどの教派でも同じです。正教では「復活大祭(ふっかつたいさい)」と言いますので、どれだけ重要視されているかがよくわかると思います。

 

2.クリスマスが12月25日とは限らない

一般にクリスマスといえば12月25日ですが、それはグレゴリウス暦(新暦、現在日本で使われている暦)を採用している国の話です。カトリックやプロテスタントはもちろん、ギリシャ正教やルーマニア正教では、12月25日がクリスマスです。しかし、ロシア正教やセルビア正教、ジョージア(グルジア)正教など、ユリウス暦(旧暦)を採用しているところでは、クリスマスは1月7日となるのです。

なお、日本正教会もロシア正教会と同じユリウス暦を採用していますが、クリスマスに限ってはグレゴリウス暦に合わせて12月25日にお祝いをすることになっています(教会によっては1月7日にもお祝いをするところがあります)。

 

3.クリスマス前の40日間はお祝い事をしない

これは驚かれる方が多いかと思います。クリスマスの前には「待降節(アドベント)」という期間があり、カトリックでは「愛と喜びに包まれた待望の時」と位置付けられています。

しかし、正教会には「斎(ものいみ)」という習慣があります。これは大きな祭の前に行う心の準備期間です。この間は植物性の質素な食事をし、お祝い事をしません。そのため、クリスマスイブにパーティーをすることはしません。そのかわりクリスマスの聖体礼儀(礼拝)後は盛大にお祝いパーティーをします。正教はメリハリをはっきりとつけ、バランスをとても大切にしているんですね。

 

いかがでしたか? ここまで正教会のクリスマスを紹介してきましたが、やはり実際に正教会のクリスマス聖体礼儀(礼拝)に参禱(さんとう、参加すること)されることをオススメいたします。正教会へはじめて行かれる方は事前に教会のホームページを見たり教会に直接電話をしたりして詳細を確認したほうがいいでしょう。何ごとも頭で理解したつもりでも経験がないと実際は半分しかわかっていませんから。

 


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