「教会とインターネット」セミナー —インターネットが拓く新・福音宣教— が築いたもの


土屋至(SIGNIS Japan インターネットチーム)

第1回「教会とインターネット」セミナー

SIGNIS Japan は2003年より「教会とインターネット」セミナーを23回開催してきた。過去の開催場所とテーマ、講師などの履歴はこちらに掲載されている。

第13回 田園調布教会

実は私は第1回目のセミナーの講師だった。第1回目が開催されたとき、私は SIGNISの会員ではなかった。当時の事務局長であった平林冬樹神父が、勤務先のカトリック学校でホームページ(以下HPという)を先駆けて構築し、「情報」の授業と教科書の執筆も担当した私を講師として呼び出したのである。

第1回の講演で提示したことに情報の10の特質福音の10の特質がある。「3.福音は分かち合えば分かち合うほどに価値を生み出す」「4.福音にコピーライト(著作権)はない。どこにでも移植可能である」「5.福音は『センス オブ ワンダー』という心の動きとともにやってくる」というような福音の特質は今のSNSの特質を予感していた。

 

年2回のセミナー

このセミナーは当初は年2回計画された。そのうちの1回は「教会HP担当者交流会」、あと1回は「インターネットが拓く新・福音宣教」というテーマで行われた。

まずターゲットを「教会HP」に定め、全国の教会や修道会のHPの「定点観測」を4年に1回くらいのペースで過去3回行ってきた。全国のカトリック教会を検索して自前のHPの紹介であるかどうかとか更新の頻度とかそのHPの特徴などを調査した。セミナーではそうして見つけた特徴あるHPの担当者を呼んでそれぞれのHPを紹介してもらったこともある。

第15回 目黒教会

他の1回は教会HPと離れて「インターネットと福音宣教」をテーマとした。著作権の問題、大震災とインターネット、殉教者・列聖・列福をどう取りあげるか、SNS と福音宣教などをテーマとして講師の話を聞くなどの勉強会が企画された。また、これまで押川司教、菊地司教(現東京大司教)、郡山司教、勝谷司教、幸田司教を講師として講演を行った。仙台と神戸でセミナーが行われたこともあった。

ただし現在は年1回のペースとなっている。テーマも教会HPに関することよりも「SNSと福音宣教」というテーマが多くなるであろう。

 

教会HPの進化の3段階

第16回 田園調布教会 交流会

3回の「教会HP定点観測調査」を行いながら気がついたことだが、教会HPは次の3つの段階を経て進化してきたと思う。

第1期 教会の中のコンピューター技術者が担当して見栄えは今ひとつだが個性豊かなHPがうまれた。なにをコンテンツとするか考えるために、こういう技術者たちが聖書を読み出したり、神学の勉強をはじめたりというにわか勉強がはじまった。内向け(信者向け)の内容と外向けの内容とが混在しているHPが多かった。

第2期 当初の始めた人の個性豊かなページの内容が問題となり、そういう人たちを排除して主任司祭の監督の下に広報担当者が外注する「公式HP」がつくられた。教会によっては二つのHPが現れてトラブルになったところもあった。見栄えはよくなったが、おもしろい内容のないHPとなってしまった。内向けと外向けが分離して住み分けが明確になった。

第3期 公式HPは維持に経費がかかりすぎ、迅速なアップがしにくいというところから、WordPress などを使い、初期設定は業者に発注するが、更新は教会の人がするという形のHPがつくられるようになった。HPは外向けのものと割り切り、特に近隣の人が教会に訪れたくなるような内容を作り、内向けには Facebook などのSNS がもちいられるようになった。

 

教会HPのコンテンツに関して

2017年2月に開かれた第22回のセミナーは、講師として八木谷涼子さん、第23回ではBREADFISHの丸山泰地さんをお招きして話を伺った。二人の講師ともに、教会HPを新しく教会を訪れようとしているひとにフレンドリーにするためにはどうしたらいいかというとても具体的な話をされた。

第18回 平塚教会

たとえば言葉のつかいかた、教会のなかでしか通じないような言葉を多用するのはNGだとか、新しく教会をおとずれようとしているひとたちがもっとも知りたいことにこたえているか、HPで新しく来るひとをやさしく歓迎してくれそうな雰囲気がつたわってくるかどうか、そういう視点からいろいろな教会のHPを例にだして説明された。

教会HPの目的はその教会をおとずれてみたいという気にさせることであり、福音をつたえるということはそれを目的にしたサイトにリンクを貼ればいいと言いきっている。たとえば牧師や司祭の説教を音声や映像で流しているところもあるが、そのほとんどは自己満足でしかないと八木谷さんはいっておられた。

実はこの点については、私たちのセミナーとはちょっと考えがちがうと思ったのである。これまでこのセミナーでは、教会HPにはどのようなコンテンツをのせたらいいのかということに主眼がおかれてきた。それは第18回、第22回のときにシグニスレポートとして発表した「教会HPを活性化するための12の原則」として凝縮されている。


教会ホームページを活性化するための12の原則

1.教会が活性化すればするほど、教会ホームページも活性化する。そうでない場合、つまり教会ホームページは活性化しているが、教会は沈滞しているという羊頭狗肉なケースも「あり」。教会ホームページが教会を活性化することもありうる。

2.教会の建物や設備よりも、そこにどれだけ「信仰の喜び」が表現されているか、それを読み取れるホームページでありたい。

第19回 神戸中央教会

3.教会ホームページは、教会メンバーを対象とするのではなく、キリスト教を知りたいという人、教会を知りたい、行ってみたいという人の「目線」で表現され、そのニーズに親切に応えるものでありたい。

4.その教会ホームページの、ほかにはどこにも書かれていない個性的でユニークなコンテンツこそが《たから》である。どこにでも書かれているようなことは書かれているどこかとリンクをはればいい。

5.教会の信徒の《いきざまと信仰》があふれ出ている、この教会に行ってこの人と会ってわかちあってみたいと思うような内容をあふれさせよう。

6.教会と地域との関係を表した記事も貴重な《福音=good news》である。町おこしや地域行事への参加、地域で活躍している人の紹介など。その地域を知るために調べているうちに教会ホームページに迷い込んでしまったというケースが生じるのが理想的である。

7.たとえば、キリスト教や信仰についての質問が投稿されるとする。それに神父さんだけが応えるのではなく、いろいろな人があれこれと異なった答えをできるシステムがあったらいい。

8.教会で行われている「入門講座」と連動しているホームページでありたい。

9.他の教会ホームページで行われていること、かかれていることを自分の教会でもやってみて、リンクを張る。他の教会のコンテンツもあたかも自分の所のもののように取り込むというのがかしこいやりかたである。

10.教会ホームページに笑顔の写真を溢れさせよう。人の顔をぼかしたり、顔のない写真をアップするのは《愚の骨頂》である。プライバシー恐るるに足らず。

第23回 上野教会

11.ホームページに掲載する記事を主任司祭の事前検閲制ではなく、アップしたらそれをチェックするという事後報告制にする。

12.その教会の独自なテーマがあったらいい。たとえば「家族」たとえば「教会と音楽」たとえば「祈り」。そのことを知りたいならそのホームページにいけばいいというふうになったらいい。リンク集だけでもいい。たとえば「キリシタンを主人公とする小説リンク集」みたいなもの。


ここには23回の「教会とインターネット」セミナーが蓄えてきた「極上の福音」が凝縮されていると自負しているが、これを読まれているみなさんはどのように思われるだろうか。

 


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