第23回「教会とインターネット」セミナーレポート


2018年3月3日、第23回「教会とインターネット」セミナー――インターネットが拓く新・福音宣教(主催:SIGNIS JAPAN、後援:サンパウロ、女子パウロ会)が、カトリック上野教会(東京都台東区)にて行われました。

今回のテーマは「キリスト教会の福音発信術を考える」と題し、教会ホームページとSNSの現状をふまえながら、これからの方向性を考えました。この記事では、講師の丸山泰地さん(キリスト教会専門のホームページ制作サービス「BREADFISH」代表、日本同盟基督教団名古屋福音伝道教会教会員)による講演「キリスト教会の情報発信術 ~大切なのはITスキルではなかった~」をまとめています。

 

BREADFISHを始めたきっかけ

まず、丸山さんは「教会ホームページ制作の技術的な手伝いをしたいと思って、BREADFISHを始めた」と語り始めました。しかし、ホームページ制作を手伝っていくうちに「本当に必要なのは『伝える』こと」であり、「教会の案内や自分たちの魅力などをいかに伝えるかということが大事だ」と気付いたそうです。

 

「BREADFISH」代表の丸山泰地さん

教会ホームページの問題点と対策

教会ホームページの問題点として、丸山さんは「なんとなく情報発信している」「〈相手の聞きたいこと〉より〈自分の言いたいこと〉を優先している」「自分をよく見せようとしすぎ」「誰に向かって話しているのかわからない」「上から目線、説教されている感じがある、おしつけがましい」「戦略がまったくない」などを指摘しました。

その対策として挙げられたのが「〈何の目的で〉〈誰に向けて〉情報発信をするのかを明確に」「読み手との距離感を意識する」「安易に大企業の広告のまねをしない」という三つです。

 

1)「何の目的で」「誰に向けて」情報発信をするのか明確に

ホームページを作るときには何らかの目的がありますが、教会ホームページの一番の目的は「教会に来てもらうこと」でしょう。それについて丸山さんは「1サイトにつき1目的、その目的に合わない内容のものは入れない」と言います。理由は「ホームページというのは目的を持って見に来るものであり、ある程度興味があって検索した人だけがたどりつくものだから」です。例えば、教会ホームページを見るまでのプロセスは以下のようなものが考えられます。

A きっかけ……小説、映画など
B 欲求……教会に行ってみたい
C 検索……「名古屋 初心者 教会」など
D 調査……教会ホームページを見て、どんなところか調べる
E 行動に移す……実際に教会へ行ってみる

丸山さんによると、多くの教会ホームページはAに手をつけがちだと言います。つまり、聖書解説や福音宣教的な内容をホームページに載せ、キリスト教に興味を持ってもらおうとしているということです。しかし、それは「教会に来てもらうこと」とはまた別の目的であり、それも入れると「1サイトにつき1目的」を超えてしまいます。

教会ホームページを検索して調査する人はすでにきっかけがあり、A~Bをクリアしているため、教会ホームページの守備範囲はC~Eということになります。「教会に興味がない人を振り向かせるようなメッセージを入れるのはほとんど意味がない」「教会ホームページは宣教の場ではない」と丸山さんは言います。確かに、福音を伝えたいという気持ちは大事ですが、「まずは教会に来てもらうことが目的で、福音は教会に来てから伝えればいいのではないか」との考えでした。

セミナーの様子

まとめると、教会ホームページは「教会に来てもらう目的で」「教会に行ってみたいという興味を持っている人に向けて」情報発信している、ということになります。したがって、教会ホームページを「教会に興味を持っている人が安心して教会に足を運べるようにするためのツール」であると考えれば、自然とどのような内容を載せればいいのかがわかってきます。

 

2)読み手との距離感を意識する

これは端的に言えば、「読み手に寄りそって、相手の視点でホームページを作る」ということです。

初めて教会に来た人と教会には、信頼関係がありません。そこでいきなり「信じませんか?」などと尋ねても、おそらく「はい」と答えてはくれないでしょう。それはホームページにおいても同じであり、教会に初めて行こうとしている人には、まず信頼感や安心感を持ってもらうことが大事だと丸山さんは言います。

そのためには、初めての人でも安心して教会に来てもらえるような文章を書くことが重要になります。信仰の押しつけがないことを伝え、あまり専門用語を使わないようにして敷居を下げ、服装・持ちもの・所作・ミサや礼拝の手引きといった具体的なことが書いてあるといいそうです。

 

3)安易に大企業の広告をまねしない

広告には、ブランドイメージをアップするための「イメージ広告」と、読み手の反応を得るための「レスポンス広告」があります。前者はある程度知名度がある場合に使うものですが、教会はまず知名度や信頼を得ることから始めなければならないので、具体的・説明的・機能的なレスポンス広告のほうがよいと丸山さんは言います。

そこには「共感」「信頼・安心」「効果(結果)」「期待する行動」という四要素を入れるといいらしく、特に「期待する行動」は明記しておいたほうがいいとのこと。例えば「どなたでも安心していらしてください」「お気軽にどうぞ」「献金をお願いしています」といった具合です。

 

SIGNIS JAPAN顧問司祭・晴佐久昌英神父

教会ホームページはどのように運営すればいいのか

次のテーマは教会ホームページの運営方法です。丸山さんは「毎日更新しなくてもいい」「文章をたくさん書く」「ホームページからあたたかくもてなす」といったポイントを挙げました。

 

1)毎日更新しなくてもいい

ホームページを作っていると、「毎日更新すればアクセス数が増えるのでは」と思いがちですが、今まで想定してきた読み手のことを考えると、教会ホームページを毎日見にくるという人はほとんどいないでしょう。

したがって、「一人の人が教会ホームページを見にくるのはたった一回だと考え、その〈たった一回〉で相手の聞きたいことを伝えるのが重要」だと丸山さんは述べます。そうなると、「最初の作り込みが大事であり、それを改善していくことが大事」になってきます。また、改善するということは必然的に更新するということにもなります。

 

2)文章をたくさん書く

ほかにも、「文章はあまり読んでくれないだろうから、画像や動画を増やそう」と思うことがありますが、前述のように、ホームページの特性は「まったく興味のない人は来ない=ある程度興味のある人が来る」です。したがって、そのような人たちは文章を読んでくれるので、相手の知りたい情報をきちんと書くことが重要になってきます。

読みやすくするため、あるいはわかりやすくするために写真や画像、動画を入れる必要もありますが、それらはあくまで主役である文章を引き立てるための脇役だと丸山さんは語ります。

 

3)ホームページからあたたかくもてなす

読み手がホームページを開いて自分のニーズに合わないと思うと、すぐに離れてしまうので、読み手がどういうきっかけで検索するか、どんなニーズがあるかといったことを想定しながらホームページを作ることが大切になってきます。「読み手との距離感を意識する」で挙げたことのほかにも、トップページに読み手が検索しそうなキーワードをちりばめることで、検索エンジン対策にもなります。

このように、教会に足を運ぶ前から、つまりホームページからあたたかくもてなすことは非常に重要であり、「ホームページは教会の玄関」だと丸山さんは考えています。集会案内の時間・内容・目的などをわかりやすく丁寧に説明するなど、そっけないデータではなくあたたかみのある言葉を載せ、集会の様子を撮影した写真や動画で実際の教会の中が見えるほどにオープンにすることによって、相手に安心感を与えることができるということです。

ほかにも、Googleアナリティクスなどの解析ツールを使うことによって、どのようなキーワードで検索されたか、どのくらいの時間いたか、年齢層や男女比はどうかなどを調べ、より読み手のニーズに合った改善ができるとのことです。

 

セミナーの様子

ホームページで福音は伝えられないのか

丸山さんは「教会ホームページは宣教の場ではない」と述べましたが、ホームページで福音は伝えられないのか、教会のホームページなのにそういうものがないのは変ではないか、という疑問が浮かびます。それに対して丸山さんは、「そのようなホームページも可能だが、教会ホームページとは分けて作ったほうがいい」と言います。

ここで押さえておきたいのは、今回丸山さんがお話しくださった「教会ホームページ」とは、各地に存在する教会(小教区)の案内のようなものであり、上記C~Eをカバーするものだということです。一方、A~Bを担っているものとして有名なのは上馬キリスト教会のツイッターですが、それもやはり教会ホームページとは別の独立したサイトととらえたほうがいいでしょう。

 

教会ホームページにとって大事なこと

最後に丸山さんは、「教会ホームページにこそ愛が必要です。愛を伝える教会のホームページに愛がないのは残念なこと。初めての方々の立場に立ちきって、ホームページからおもてなしを始めていきましょう」と講演を締めくくりました。

(文:高原夏希/AMOR編集部)

 


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