服部 剛 旅先の宿で時を忘れ、『沈黙』のページを捲ってゆく。しばらくのち、顔を上げて時計を見ると、針はすでに午前0時を過ぎていた。〈今夜はクリスマスだ〉と思い起こしながら、静寂の中、本の中にいる【踏絵のあの Continue reading
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沈黙の風景 2
切支丹巡礼の旅も3日目となった。この日は12月24日で、クリスマスイブである。聖夜を上五島の教会で過ごすためミサに与(あず)かろうと思い、夕方に長崎港から出る高速船に乗り、上五島へ向かった。12月は時化(しけ)で海が荒れ Continue reading
エンドレス・えんどう 4
さて、この連載も4回目になり、少々前置きが長くなりましたが、『深い河』という小説の本題に入っていきましょう。そうは言っても、あらすじをすべて話すと面白くないので、僕も、机の上に置いた文庫本のページをめくりながら、〈目に見 Continue reading
沈黙の風景 1
長崎から車で一時間近く走り、海沿いの坂道を上り下りすると、旧外海(そとめ)町に入る。【遠藤周作文学館】の小さな看板が目にとまり、左折すると、灰色の空から雨は降り始め、車を出ると、冷たい風は旅人の私の頬を叩き、無数の雨粒は Continue reading
エンドレス・えんどう 3
名曲喫茶「麦」に入ると、ショパンのピアノ曲が流れていました。幾枚かの風景画は壁に掛けられ、古びたソファの置かれた店内の空間は、過去へとタイムスリップしたような感覚に誘(いざな)います。 ソファに腰を下ろし、僕は鞄の中から Continue reading
エンドレス・えんどう 2
〈縁〉の話に戻りましょう。半年ほど前、僕は雑誌『カトリック生活』に「遠藤文学は、今も働き続ける」というテーマの原稿を書くため、鎌倉の黙想の家(殉教者修道院)に泊まり込んだのでした。その時に出逢ったのが当直に入っていた土屋 Continue reading
エンドレス・えんどう 1
初めまして。僕は若き日に作家・遠藤周作の文学に出逢い、自分の人生を決定づける贈り物をもらいました。遠藤周作は小説家として多くの伝言を残していますが、僕は詩を書くことで僕なりのメッセージを伝えていければと願い、今日も詩を認 Continue reading