東京・四谷のJ大学……筆者も非常勤講師を務める大学のキャンパスから人が消えてまもなく4ヶ月が過ぎようとしています。東京のどの大学にも訪れている光景でしょう。今年の日本の教育界は、令和の教育改革とも呼べる、さまざまなプログラムが実施に移さる一大転機の年となるはずでした。
ところが……折からの新型コロナ・ウイルスのパンデミック。別な角度から教育界には大きな嵐が押し寄せています。いわば“オンライン授業元年”ともいえる現象。学校運営者側も、個々の教員も、そしてなによりも学生、生徒もその状況への対応のただ中に置かれています。逆にいうと、すでにそれが充分に可能な技術環境ができていたことが証明され、否応なしにその実施へとなだれこんできたともいえます。教育という、立ち止まってはならない至上の使命に取り組み、学生・生徒の学ぶ権利にしっかりと対応するために身を粉にして頑張ってきている、この4ヶ月だったのではないでしょうか。そこにある工夫、努力、発想の切り替え、それらは今後に向けての宝となっていくでしょう。この特集では、そのような教育界の動向を全般的に、またキリスト教系の大学・中学高等学校の教員、生徒、学生それぞれの立場から、オンライン授業への取り組みについて、感想とともに寄稿していただきました。
当たり前だった学校の教室風景。ひしめき合い、熱心に話す教師のつばが飛びまくっていた(?)前席。休み時間の校庭の喧騒、「学びの園」キャンパスに集う学生たちの群れの気ままな動き、語らいの声、図書館の閲覧室の席を競い取って宿題や論文に取り組む学生たちの姿、それらすべてが、しばし記憶の引き出しにしまわれています。あれはなんだったのだろう? 何世代も受け継がれてきた教育現場の姿は戻ってくるのでしょうか。今、変化にさらされたまま、どこか別な方向へとずっと変わっていくのでしょうか。半世紀前の全寮制高校のメモリーも問いかけてきます。
予定されていた教育改革は、どちらかというと教育専門家の世界での話題という面が強かったかもしれません。しかし、今やだれもが教育について考えさせられています。これを、ただ「させられている」だけでなく、「みずから進んで考えていく」姿勢に転換していくことができたなら、この禍の“時のしるし”に応えたことになるのではないでしょうか。