「西アジア」というのはまだ成長過程の概念なのかもしれません。平凡社の『世界大百科事典』(1988年発行 改訂版2005年)でも「西アジア」という項目はありません。少し古いといえるかもしれません。いずれにしても、トルコ、シリアは、西アジアといってもいいですしい、中東といってもいいようです。
前回特集の地図を見ていてくださいね。『世界大百科事典』の「中東」の項目で、中東は「東はアフガニスタン、イランから西はモロッコなど北アフリカの大西洋岸まで、北はトルコから南はアラビア半島全域ないしアフリカの角やスーダン、サハラ地域までを包含する地域を指す」と言われています。ただその範囲は必ずしも一定しているわけではないとも、ね。
ウィキペディアの「西アジア」という項目に数えられている国々は、ほぼ「中東」と呼ばれる国々が入っているほか、黒海とカスピ海の間のコーカサス山脈の南側にあるアゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア(グルジア)についても「西アジア」に含めることも多いと書かれています。
さらに、それらの国に関する個別の言及を見ると、「旧ソ連諸国のためヨーロッパに含まれる場合もある」との但し書きもあります。
ペルシアやトルコやモンゴルとも関係が深いので、「アジア」という括りで考え、その意味で「西アジア」という概念を私たちの中に育てていくことが必要かもしれませんね。そして、なによりも、それらの国々の固有な文化や歴史を素直に知っていくことが大事なことですけれど。
もう一つ、今見た西アジアや中東を指す言葉とかぶりそうなのだけれど、「オリエント」って言葉もあるような。
この言葉が文明の違いを意味するような言葉になったのは、ローマ帝国が東西に分かれていった4世紀末からのことで、オリエントが広く東方世界、オクシデントが広く西方世界となり、これはキリスト教の多様な発展領域の言葉となっていきます。東方キリスト教と西方キリスト教といった形ですね。
これはエジプトやメソポタミア、トルコ、イランなど、ギリシアの東側からイランあたりまでの古代文明地域、たくさんの民族や言語や宗教のひしめく歴史世界を指すものです。
「東洋」というと、日本、中国、インドを代表として(さらに東南アジアも入る)、仏教が広まり、なおかつヒンズー教や儒教、道教や神道など固有の宗教を伝統とする世界をイメージするけど、これで世界全部じゃないよね。
それに今では、日本にしてもそんなに、東洋だけ、というわけでもないでしょうし。現代の文化状況からすると「西洋」「東洋」という言葉は、それ自体ちょっと古語のようにも響きます。
(調べ・構成:AMOR編集部)