土屋 至(カトリック鶴見教会信徒 SIGNIS Japan 代表)
いまから50年以上前、教会は若者であふれていた。イエズス会が経営する学校で中学3年の時に洗礼を受けたのだが、一緒に洗礼を受けたのは50人ほどいたのだ。あのときなぜ洗礼を受けたのかは、ほとんど覚えていない。みんなが受けたから受けたとしか言いようがなかった。
高校生になった私は、クリスマスとイースターをとても楽しみにしていた。深夜ミサの後に青年会が主催する徹夜フォークダンスがあったからである。
そのころ私の教会は学校の中にあったので、その学校の体育館でフォークダンスを踊り明かした。しつけのきびしい女子高校であったが、なぜかクリスマスとイースターだけはこの徹夜フォークダンスが認められていた。男女の高校生がふれあう数少ないチャンスであり、女子のほうが多かったので男子は大変歓迎された。多いときは男女あわせて40人くらいいたように記憶している。
オクラホマ・ミキサーやマイムマイムなどの曲が繰り返し流され、次々とペアを変えて手を取り合って踊っていくのがフォークダンスである。女の子とふれあうチャンスがここにしかなく、話をしようにも何を話したらいいかわからなかった思春期の少年にとってフォークダンスは胸をときめかすふれあいの時だった。
次々とペアを変えて踊っていくうちに、相手の女性の手のぬくもりや感触がひとりひとり違っていることに気づいた。かわいい子がひやっとするほど冷たい手だったりして…………。
外が少し明るくなってきて最後の曲になると、もの悲しい気分に襲われた。
残念ながら教会が学校のそとへ移転してから、この習慣はなくなった。
1年の行事の中で、クリスマスほどこのようなふれあいの思い出をつくりだす時はないのではないか。クリスマスミサはいうに及ばず、サンタクロースのプレゼントやクリスマスケーキや多くのクリスマスキャロルは、いずれもそのふれあいのなつかしさをつくりだす最高の演出効果であるといえるであろう。