緩いつながりが照らすもの


清水亜希子(会社員)

「さびしい……」

目に涙をためて、6歳になったばかりの次男が言った。コロナで保育園から登園自粛を求められ、やむなく在宅勤務の傍らに放置していたときだ。小学生の長女と長男(もちろん学童も登園不可)に宿題をさせ、次男にはプラレールやYouTube。「ママ、いっしょにあそぼ」と言われても、「ダメ! ママ仕事なの!」と突き放し、姉兄を「早く宿題やりなさいッ!」と怒鳴る。小学校の宿題、教室が開けないくもんの宿題。仕事ははかどらず、かろうじて子どもに手をあげないで済む毎日。
そんな中、小さな子が発した「さびしい」は、私を貫いた。自分は何をしているのだろう。両手で顔を覆った。台所には洗い終えていないたくさんの皿。お風呂場には、さっき次男がもらしたパンツとズボンが汚臭を放っていた。

苦しいのはうちだけじゃなかった。
未就学児を含むお子さん3人でお留守番させている共働きのご家庭。
学校がなくなって生活が昼夜逆転し、小学生のお子さん達の就寝時刻が朝4時になってしまったご家庭。
まじめでお料理が得意なのに、ガストの弁当を多用して乗り切っているママ友。
いっぽうで、パン作りなど子どもとの「おうち時間」を楽しむママさんがいる。
お子さんとのDIYに汗を流すパパさんがいる。
ただし、楽しみも悩みも「自分の家だけ」で完結させねばならない。公園に行くと、近隣の方が小学校に通報するので怖い。友達を誘うこともはばかられる。コロナは、子育てを孤独なものに変えた。

子育て家庭を苦しめるものに、「宿題」と「家庭用時間割」がある。
ただこなせないだけではない。学校から何を求められているのかわかりにくい。課題が書かれたプリントが複数に分かれて把握しきれない。かといって、あまり学校に電話ばかりすると迷惑になる。でも本当に大丈夫なのか。同じ不安を、何人もの保護者が抱えていることに気づいた。
そこで私は、子どもが在籍する小5と小2の保護者LINEグループを作った。誰でも参加して、困ったときに相談できるように。

LINEグループのやりとり

私の知っている保護者は多くない。だから、「よかったらお友達も招待してください」とお願いしつつお声がけをした。参加をお断りされることもあった。やっぱりちょっと傷ついた。でも、「●●ちゃんちのママも誘っていいですか? シンマでがんばってるので力になりたいんです」と、輪を広げてくれる方もいた。グループには小5で8割、小2で6割の保護者が集まった。
相談相手が多い保護者さんは心配いらない。でも、私がそうだが、交友関係が広くない方もいる。学校のおたよりを読み込めていない方もいる。グループでは困ったら相談し、知っている人が答える。学校に問い合わせた人は情報共有する。先生も問い合わせ対応の負担が減る。学年が緩くつながって、互いに助け合える雰囲気が好きだ。

「暗いと不平を言うよりも、あなたが進んで明かりをつけなさい」。
私の好きな、マザーテレサの言葉。ささやかな優しさのつながりが、人の不安や寂しさを照らすのだと思う。

 


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