今年は復活祭が4月20日となり、4月13日~20日が聖週間と呼ばれる一週間です。この一週間はカトリック教会の典礼を例にとると、実にさまざまなシンボルが登場します。
まず聖週間の始まりは受難の主日(枝の主日)といい、このサブタイトルのとおり、「枝」が一つのシンボルです。聖木曜日は司教座聖堂で聖香油のミサがささげられ、さまざまな典礼で使われる「油」が大きな主題となり、その聖別と祝福が行われて各教会にもたらされます。その聖木曜日の夕方には「主の晩餐の夕べのミサ」がささげられ、イエスと弟子たちとの最後の晩餐そのものが記念されつつ、感謝の祭儀の制定とその意味が示されます。また、最後の晩餐のとき、イエスが弟子たちの足を洗ったことを記念し、主のへりくだりと奉仕の心に倣うために洗足式が行われます。ここでは「足を洗う行為」が一つの大きなシンボルです。翌日の聖金曜日、この日は何よりもこの金曜日にイエスが十字架上で死なれたこと、すなわち受難の極みが記念され、そのために「十字架」そのものが中心となり、十字架の礼拝として、キリストへの礼拝が表現されます。
次にいよいよ、イエスの復活を待ち、その実現を迎えて喜び祝う復活徹夜祭では、「復活ろうそく」という「ろうそく」、そこにともされる「火」、そして「光」などが復活という出来事のシンボルとなります。同時に、この祭儀が古来、入信式(洗礼式)の最適日とされていたことから、洗礼の「水」も重要なシンボルとなります。そして、また復活したイエスとともなる晩餐としての感謝の典礼は、主の「食卓」「パンとぶどう酒」という、キリスト教にとって、最も大切なものが、その根本的な意味を開き、そのシンボルとしての生命力が新たにされます。
そして迎える復活祭(復活徹夜祭から始まる主日の日中のミサ、そして復活の八日間)と復活節(聖霊降臨祭までの50日間)、英語で言うイースターには、イースターエッグ(復活祭の卵)、イースターバニー(復活祭のうさぎ)などの独特の民間習俗があり、これにまつわる行事やグッズがしばしば、近年の日本でも話題になります。
教会生活の中では、1年に一度、聖週間と復活祭に、これらのシンボルを伴う儀式や行事に出会うのですが、実際のところ、1年に一度、いわば“忘れたころにやってくる”典礼として、儀式書と首っ引きで、やり方を皆で思い出しながらささげるという、慌ただしい実践となるのも正直な事実です。多彩なシンボルの持つ意味の深さ、豊かさなどは、まずは聖週間が開けてから(変な表現ですが)、新たな1年をかけて調べ、考え、味わうにふさわしいものといえるでしょう。
こうしたことについてまとめて解説する本が乏しい一方、インターネットの世界では、個々のシンボルについてさまざまな情報に出会います。ウィキペディアだけでなく、AIがとりまとめた解説情報がまずは飛び込んできますが、それらの情報の中から何を重要なものとして受けとめ、考えていったらよいのか……そのような情報に対する“主体性”へのヒントがむしろ必要に思えます。そうしたことの見当づけとなるようなものを手探りしつつ提供していきたいというのがAMORの思いでもあります。今回は、いくつかのシンボルについてだけですが、今後も続けていきたいと思っています。