1980年、若い女性10名が集団で行方不明になったと大きく報道されました。その発端は、メンバーの家族からの報告やマスコミの取材により、「イエスの方舟」がメンバーに対して過激な洗脳や肉体的虐待行っているという疑惑が浮上したことでした。団体内で隔離された生活を送り、外部との接触を厳しく制限されていたといわれ、メンバーは家族や友人と連絡を取ることが困難となっているといわれ、その閉鎖性が協調されていたのです。
事実はどうだったかは別として、その当時の日本では、拉致だの洗脳だのということはほとんど聞かれなかったので、すごく驚きを持って語られるようになるのです。
当時「イエスの方舟」は、キリスト教の宗教と見なされていました。なので、カルト集団として見なされていたのです。
その後、「イエスの方舟」の主催者・千石イエスといわれていた千石剛賢は警察に出頭し、嫌疑不十分で釈放されてからの消息はあまり聞かれることがありませんでした。どうなっているのかな? という興味はありましたが、その後をあえて知ろうという意識もないまま年月が過ぎていきました。
今回、「方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実」と題し、これまでのことがドキュメンタリー映画になるということで拝見しました。
私の知っていることといえば、一度家に帰された女性たちが、また千石イエスのもとに集まり、「シオンの娘」というバーを経営し、千石イエスのもとにいること、千石イエスは、2001年に亡くなったということぐらいでした。これまでの45年の軌跡とともに、千石イエス亡き後のイエスの方舟など、騒動になった当時のことや現在が69分の中にふんだんに映し出されていました。
映画の中で、監督の佐井大紀氏は、カルトだったのか、宗教なのか、イエスの方舟とは何だったのかという問いかけをしています。千石イエスの妻・千石まさ子氏は、宗教は嫌いだとはっきり明言しています。では、イエスの方舟とは何だったのかその疑問は、皆さんに問いかけられています。世間の喧噪の渦の中に巻き込まれたイエスの方舟ですが、その正体が明確に描かれています。
ただ、カトリック信徒である私からすると、聖書を研究するということは、イエスの伝えたいこと、キリスト教について学ぶということだと考えています。結論的にいえば、イエスの方舟は、カルトではないと私は感じました。宗教なのかと問われると、?ですが、純粋に聖書を研究する団体というのが結論ではないかと感じました。そこにはイエスの方舟の考える宗教、信仰とは何かを考えることは重要だと思います。
当時を知る人も、知らない人もカルトとは何か、そしてイエスの方舟事件とは何だったのか、今、カルトといわれる宗教についてさまざまに語られる時代だかこそ、イエスの方舟事件について改めて考えると宗教とは何かが見えてくるのではないかと思いました。
中村恵里香(ライター)
7月6日(土)ポレポレ東中野
7月12日(金)福岡・KBCシネマほか全国順次公開
公式HP:hakobune-movie.jp
監督:佐井⼤紀/企画・エグゼクティブプロデューサー:⼤久保⻯/チーフプロデューサー:能島⼀⼈/プロデューサー:津村有紀/クリエイティブプロデューサー:松⽊⼤輔/撮影:⼩⼭⽥宏、彰末永剛/ドローン撮影:RKB CINC/編集:佐井⼤紀、五⼗嵐剛輝/MA :的池将
製作:TBSテレビ/配給:KICCORIT /配給協⼒:Playtime
2024年/日本/69分/©TBS