Doing Charity by Doing Business(33)


山田真人

2025年大阪・関西万博で活躍した神戸女学院大学、リーズ大学の学生スタッフ

2023年から月1回のペースで更新しているこの連載ですが、2025年一杯も変わらず続けることができ、30回を超えることができました。一年を振り返り、NPO法人せいぼとしてもカトリック的な価値観からチャリティとは何かを考える機会がありました。その一つが、同志社大学でのチャペルアワーでした(詳しくはこちらをご覧ください)。

そこでは、ルカ福音書10章の「善きサマリア人の譬え」をテーマにお話しする機会がありました。今回はその内容を振り返りつつ、NPO法人せいぼが考えているチャリティやソーシャルビジネス、そして聖母マリアとのつながりについて、少し整理して書いてみたいと思います。

※NPO法人せいぼの2025年度年間活動報告はこちらから。

 

「善きサマリア人の譬え」から考えるチャリティ

ルカ10章には、強盗に襲われ倒れている人と、そこを通りかかる三人の登場人物が描かれています。祭司とレビ人はその人を見ていながら通り過ぎていく一方、最後に登場するサマリア人だけが立ち止まり、介抱します。イエスはこのたとえ話の中で、「誰が隣人になったのか」と問い、「憐れみをかけた人(=最後に登場したサマリア人)だ」と答えを示します。そして最後に、「同じようにあなたもそうしなさい」と語ります。この「そうしなさい」という言葉、実はとても深い意味を持っています。単に助けなさい、優しくしなさい、ということではなく、「腑が揺れるほど心が動き、その人に寄り添う行為」を指しているように感じます。

チャリティというと、「お金を寄付する」「物を渡す」というイメージが強いかもしれません。もちろんそれも大切です。でも、せいぼがより大切にしているのは、心が動いたその瞬間を、一回きりで終わらせないことです。例えば、旅先で困っている人にお金を渡す。それは素晴らしい行為です。ただ、それで終わってしまうと、その善はその場限りのものになります。でも、「なぜ自分は心が動いたのか」「この状況を変えるために、長く続けられることは何か」を考え始めた瞬間、チャリティは次の段階に進みます。それが、私にとってのソーシャルビジネスです。

 

聖書学的に読むと見えてくること

大学時代、聖書を学んでいたときに、ルカ10章の「言葉の使われ方」がずっと気になっていました。前半では「下る」を意味するギリシャ語の接頭辞「カタ」が多く使われています。祭司もレビ人も、道を下りながら、流れに身を任せるように通り過ぎていきます。でも後半、サマリア人が登場する場面では、「エピ」(直訳だと「上へ」)という接頭辞が使われ始めます。これは「向かって」「関与して」「世話をする」といった、能動的な動きを表します。

サマリア人は、下ってきた道をわざわざ引き返し、立ち止まり、関わります。さらに、倒れていた人を介抱したあとで宿に泊め、「足りなければ帰りに払います」と言い残します。この35節の部分は、あまり注目されないことが多いのですが、私はとても大事な場面だと思っています。ここには、「次のことを考えて行動する姿勢」があります。心が動いたから、助けがそれで終わらず、責任を引き受け、継続を考える。私は、この瞬間こそが「チャリティがビジネスに変わる瞬間」だと感じています。

聖書は信仰の書であると同時に、非常に優れた文学でもあります。100年前を生きた人の物語を読むのは、100年前を知るためではなく、そこにある普遍的な真理を、今を生きる私たちに重ねるためです。この「読み替える力」は、ビジネスや組織づくりにもとても大切な力だと思っています。

 

聖母マリアと、せいぼのこれから

「せいぼ」という名前を聞くと、多くの方が「聖母マリア」を思い浮かべると思います。私自身、せいぼの活動の根底には、聖母マリアの生き方があると感じています。聖母マリアは、抽象的な理念ではなく、具体的な人生を生きた一人の人間です。その生き様が、信仰として受け継がれ、多くの人の支えになってきました。これは、とても「文学的」な信仰の伝わり方だと思います。実際、プロテスタント系の教会や大学の方々が、私たちの活動や「聖母マリア」という存在に共感して、一緒に取り組んでくださっています。宗派や立場を超えて人がつながるのは、具体的な物語と生き方があるからだと思います。

せいぼは、キリスト教という枠の中に閉じこもるつもりはありません。善きサマリア人のように、立ち止まり、引き返し、関わり続ける。聖母マリアのように、引き受けて生きる。その姿勢を大切にしながら、チャリティを「一回の行為」ではなく、「生き方」として広げていきたいと思っています。

マラウイのビジネスセンターで、2025年にはインターネット環境が大きく改善された

 


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