昨年、日本で初めてデフリンピックが行われ、ろう者に向ける目が急に優しくなったように感じているのは私だけでしょうか。その反面、日本ファーストなどの言論から難民に対する目が厳しくなってきているように思います。ふと、そんなことを考えさせられるドキュメンタリー映画に出会いました。
イラクで暮らすクルド人の少年ラワンは、生まれつき耳が聞こえません。学校ではこのような子は教えられない。このような子は外に出すべきではないなど、ラワンがラワンらしく暮らせる場所ではないと考えた両輪と兄は、ラワンが5歳の時、国外への移住を決断します。家族は数カ月を難民キャンプで過ごした後、支援者の協力を得て、ようやくイギリスの都市ダービーに安住します。
その後、ラワンはダービー王立ろう学校に通えることになり、少しずつイギリス手話と口話を学び始めます。当初、コ
ミュニケーションをとれるようになるのは難しいと学校からいわれていたラワンですが、みるみる上達し、やがて周囲と同じように手話だけで生きていく道を選びます。
兄もラワンと意思疎通するため手話を学び始めますが、イラクでは手話だけでは人として対等に扱われないので、両親は息子の選択に不安を抱いていました。手話を嫌がる両親にラワンがいら立ちを募らせる中、一家が申請していた難民認定について内務省の審査が始まります。
一度は難民認定を却下されますが、周囲の人たちやろう学校の先生たちの働きかけにより、一時保留となります。その後、ラワン自ら動き出します。その後は観てのお楽しみです。多くの困難を乗り越え、学び成長していきラワンの姿は、言葉とは何か。伝えるとはどういうことなのか。人と人がふれあうとはどういうことなのかを語りかけてくれるよ
うです。
『僕にとって〈言葉〉は〈自由〉を意味するんだ』と訴えます。生きる上で当たり前に得られる言語がない苦しみがこの作品は訴えています。どこかに国の他人事ではなく自分のこととして受け止めたい、今の日本社会は果たして居場所を追われた人々の「ホーム」になり得るのでしょうか。ぜひ映画館に足を運んで観てください。1人の少年の成長を目の当たりとすると共に多くのことを訴えかけてくることでしょう。
中村恵里香(ライター)
2026年1月9日新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
公式ホームページ:https://lawand-film.com/
スタッフ
監督:エドワード・ラブレース/製作:フルール・ニエッドゥ、サム・アーノルド、ベヤン・タヘル、ニール・アンドリュース、マリサ・クリフォード、エドワード・ラブレース/脚本:エドワード・ラブレース/撮影:ベン・フォーデスマン/音楽:トム・ホッジ
出演:ラワン・ハマダミン
2022年製作/90分/イギリス/原題:Name Me Lawand/配給:スターキャットアルバトロス・フィルム

