Doing Charity by Doing Business(20)


山田真人

前回の記事では、カトリック学校の生徒が経済の循環を体験することで、よりエコロジーに対する理解を深め、その中で働く自分に気づき、神様から与えられた召命を感じることに繋がる教育について、考えました。今回は、その中にある贈与の体験とクリスマスの時期に考えるチャリティについて考えていければと思います。

2024年12月に行われたチャリティに関する聖園女学院でのクリスマス講演

私は2024年、上智大学グローバル・コンサーン研究所にて、チャリティとフィランソロピーについての講演会とワークショップを行いました。その中では、「NPO、企業、教育機関、ボランティア団体などで組織的な社会貢献に関わる人たちは、隣人愛を実践する個人としての視点」と「成果重視型の実務者としての視点との間を揺れ動くなかで、しばしば個人的なジレンマや組織内での対立を経験することがある」ことを取り上げました。また、チャリティは、その短期的な支援において批判を受けやすいと言われます。グローバル・コンサーン研究所客員所員の菊地了氏は論文「隣人愛と人類愛――チャリティとフィランソロピーについての哲学的考察」の中で、ジャーナリストであり歴史学者であるベンジャミン・ソスキスの言葉を引用して、「チャリティは視野が狭いが、近代的フィランソロピーは地域的・国家的・ひいては国際問題までみる」と述べています。

一方で、チャリティが同じソスキスによって、それが主体的な関わりを持ち、真に苦しむ人と直に関わって来たと擁護してされてることにも触れています。実際に、マザー・テレサのMissionary of Charityのように、チャリティという言葉が使われる文脈は、具体的な人間の生一つひとつに関わっている活動という印象を受けます。ルカによる福音書10章30~34節には、サマリア人が「その人を見て憐れに思い、 近寄って」介抱をするシーンが描かれています。しかし、描写はそれだけでは終わらず、「翌日になると、デナリオン銀貨二枚を取り出し、宿屋の主人に渡して言った。『この人を介抱してください。費用がもっとかかったら、帰りがけに払います。』 」という後の行動も描いています。こうした福音書の記述からも、チャリティが単なる心の一時的な動きというよりも、そこから主体的な関わりが芽生え、その対象者にしっかりと寄り添う姿勢であることを見出すことができます。

こうしたチャリティの姿を、スコットランド出身でMary’s Mealという世界で最大規模の給食支援団体の一つを運営するMagnus Macfarlane Barrowは、“Charity to me will always smell of freshly baked bread.”(チャリティは、私にとっては焼いたばかりのパンの香りがするんだ)と表現しています(著書 “GIVE: Charity and The Art of Living Generously” より)。彼の記憶では、チャリティは具体的な行為で、特にクリスマスの時期に毎朝母親が家で焼いて教会に持って行っていたパンを想起させるものなのです。

クリスマスチャリティ活動として、マラウイ産コーヒーを販売して下さった聖園女学院の生徒の皆さん

クリスマスは、キリストの誕生日ですが、サンタクロースが来る日ともされていて、多くの人が特別な贈り物を想起するのが、12月24日です。おそらくほとんどの人が、幼い頃にプレゼントを枕元に置かれ、無償で贈り物をもらった思い出があると思います。それをあえて誰が具体的に置いたのかは言わず、サンタクロースという共通の人物の記憶に結びつけます。そうすることで、特定の人物に対する感謝ではなく、その贈与が次の人に繫がり、自分の子供にも同じ贈り物をもらう無償の愛の体験をして欲しいという気持ちになります。これが、チャリティの記憶の大きな価値だと思います。

私たちは、たしかに一瞬の心の動きで行動し、計画性のない支援や贈与をすることもあると思います。しかし、キリスト教ではこの行為の主体性を、ある種の祈りのように捉え、その対象者が将来神様の無償の愛を感じて欲しいという可能性にかけて、チャリティを繋いでいるようにも思います。こうしたチャリティの姿を、NPO法人でも具体的な行為の中で体現することで、それを見た人、関わった人に影響を与えていくことができればと考えています。

 

山田 真人(やまだ・まこと)
NPO法人せいぼ理事長。
英国企業Mobell Communications Limited所属。
2018年から寄付型コーヒーサイトWarm Hearts Coffee Clubを開始し、2020年より運営パートナーとしてカトリック学校との提携を実施。
2020年からは教皇庁いのち・信徒・家庭省のInternational Youth Advisary Bodyの一員として活動。

 


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