「あんぱんまん」に思う


伊藤 一子(レクレ-ション介護士、絵本セラピスト)

年初の能登半島地震で被災された方々の厳しい生活を思うと、心痛む毎日です。いち早く被災者にパンを届けた製パン会社が、SNSで「リアルアンパンマン」と呼ばれていました。アンパンマンといえば、東北大震災のときに、「アンパンマンのマーチ」が、子供たちから大人へと広がりました。「アンパンマンのマーチ」はテレビアニメ『それゆけアンパンマン」の主題歌です。「そうだ うれしいんだ 生きる喜び たとえ胸の傷がいたんでも」の歌詞は、どんな時でも生きているということの尊さを思い起こさせてくれます。被災した方々はこの曲に励まされ、生きる喜び、前を向く心を再び持つことができたそうです。

「あんぱんまん」は、1973年に、やなせたかしによって書かれた絵本の主人公です。現在の3頭身のかわいいアンパンマンに比べ、スリムな大人の体形で、焼け焦げだらけの継ぎを当てたぼろぼろのマントを着ています。あんぱんまんは、どこからか飛んできて、砂漠の中で空腹から死にそうな旅人に、自分の顔を食べるように促します。あんぱんまんの顔を半分ほど食べて、旅人は元気を取り戻します。顔半分になったあんぱんまんは飛び立ち、森の中で迷子の男の子を見つけます。あんぱんまんは、男の子を乗せて家まで送り届けますが、その間におなかのすいた男の子に顔を齧(かじ)らせます。顔のなくなったあんぱんまんは、パン工場の煙突に墜落します。パンつくりのおじさんに新しい顔を作ってもらい、再び、あんぱんまんはおなかのすいた人を助けに、空へと飛び立ちます。

絵本のあとがきで、作者は、「捨て身、献身の心なくしては、正義は行えない、本当の正義は必ず自分も深く傷つくもの」と述べています。あんぱんまん、空腹の人に顔を食べさせることは、当初、大人には違和感がありましたが、子供達は素直に人を助けることと受け取り、大人気の絵本となりました。様々な理屈を考える大人よりも、子供達には作者の思いがストレートに伝わったのでしょう。パンつくりのおじさん(後のジャムおじさん)が、何度でも、あんぱんまんの顔を焼いてくれることで、不死身の正義のヒーローとなりました。幼い子供が初めて出会う正義のヒーロー、あんぱんまんがいることは、日本の幼い子供たちを幸せにしました。

50年にわたり、子供たちに愛されるキャラクターの深い利他の心を、この絵本を開くたびに思い起こさせてくれます。私たちの人生に寄り添い、応援する「あんぱんまん」なのです。

  カフェラテにハート浮かびて春隣

 

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