Doing Charity by Doing Business(6)


山田真人

前回の記事では、チャリティという言葉の意味と歴史的意義について、アイルランドを例に挙げてご紹介しました。また、贈与行為の社会的な影響力についても、世界寄付指数やアメリカの先住民のチョクトー族の例から見てきました。今回は、同じく贈与行為で結ばれたアフリカのマラウイと日本の関係や姿をお話しし、それについて学ぶことの教育的、教会の司牧的な意味も考えていければと思います。

 

マラウイと学校給食

マラウイは南東アフリカの内陸国で、2021年には人間開発指数が189カ国中164位の最貧国の一つです。一方で、マラウイはWarm Heart of Africaと呼ばれ、温厚な性格の人が多く、今まで大きな戦争を起こしたことがない国です。現地に行くと、小さな共同体ではその中で幸せな生活をしているようにも見えます。人口の大半が子ども達で、CBCC (Community Based Childcare Center) と言って、子どもたちが日中集まれる子どもセンターのような場所があり、保育をしている人々は免許を持たないお母さんたちであることが多いです。

マラウイの小学校で朝食を食べる女の子

こうしたCBCCが正式な幼稚園のように運営され、子どもたちが日々学習を積めるようになることで、現在子どもの人口が増えているアフリカに対して、新しい可能性を与えることができます。そのことを信じて、NPO法人聖母は、現地スタッフとともに、マラウイの学校給食支援に取り組んでいます。

皆さんに是非思い起こして頂きたいのが、前回の記事でご紹介したアイルランドの飢餓からの復活です。食事は私たちにとって基本的な生活インフラですが、それがあることで一日の活動の源になります。マラウイで、私たちNPO法人聖母は、朝食を学校給食として提供しています。そのことによって、学校での学習の効率化、そしてなによりも朝学校に来ようという動機付けになっています。

 

日本と学校給食

こんな給食支援による子どもたちの教育促進というエピソードは、一見日本には関係ないように思えます。しかし日本でも第二次世界大戦後の1946年から1952年まで、LARA(Licensed Agencies for Relief in Asia)から支援を受けていました。

LARAは、米国フレンド奉仕団やYMCAなどの複数のアメリカの宣教団が、チャリティとして支援を実施をしたものです。戦後の国家戦略とは別に、チャリティの文脈で日本は海外から支援を受け、その後の学校給食法にも影響を与えるほどの取り組みとなりました。その後、日本が高度経済成長期に入っていく歴史的文脈は、アイルランドのじゃがいも飢饉後の成長とも類似しています。

 

マラウイと東日本大震災

日本の外務省からのマラウイへの感謝の手紙

2011年の東日本大震災では、多くの海外の個人や団体、そして国家から支援を受けました。2013年から青年海外協力隊は、岩手県遠野市の町おこしのために、米粉をマラウイに送り学校給食として提供するというプロジェクトも行っていました。日本が国家単位で最貧国マラウイを選んで自国の困難を乗り越えるための間接的な題材にした点は、とても興味深いと思います。

それ以上に興味深いのは、マラウイが2011年、日本の外務省に支援金を送っているという事実です。こうした形で日本も最貧国に対して、自分が受けた困難を受けて支援したマラウイから、さらに支援を受ける国にもなっていたことが分かります。

 

ボランティアとキリスト教的な価値

以上のような日本とマラウイの関係から、ボランティアという行為は、その後の人間同士の関係性、さらには国同士の関係を変える働きがあるということがわかります。英国などの海外で言うチャリティ法人、そして日本のNPOなどの非営利組織がボランティアというものについて教育的な付加価値を付け、学校に提供することは、お互いにとってメリットがあることのはずです。

また、キリスト教の視点から考えると、チャリティ組織が関連するボランティアの価値は、自分が困難を抱え、弱いときにこそ発揮されるとも言えます。新約聖書のコリントの信徒への手紙Ⅱ(12:9~10)の中にも、パウロが自分の宣教活動を言い表す際に、「わたしは弱いときにこそ強いからです」という言葉があります。

さらに、ボランティアをする動機は、社会学的には自分の社会との繋がりを強くし、仕事などのコアを支える社会的資本を作るために行うともされています。こうした行為は、これから社会で活躍する人々が培うスキルとしても、とても重要であるとも言えます。

 

社会的資本構築スキルを学ぶ場としての学校、教会

学園祭でマラウイ支援の仕組みを紹介するカリタス女子中学高等学校の生徒

私は、日曜学校のリーダーをしていたのですが、その時に関わった小学生が今大学生になりそれぞれ自分のビジネスをやってみたいと言って、相談を受けたり、一緒にやってみたりしています。また、教会で幼少期にお世話になった方の学校で、総合的学習の時間を担当させて頂いたり、NPOの活動を紹介させて頂いたりしています。それを支えていたのは、教会という一つの信仰、ミッションのもとに集まる共同体の姿です。

カトリック学校や教会共同体は、上記のような国際的な視野を広げる媒体にもなると思います。例えば、教会の特有の暦である教会暦は世界共通であるため、それを基に同じ社会課題に取り組んだり、学校の宗教の時間で取り上げて声をあげたりすれば、国境も越えてインターネットでやりとりもできるでしょう。こうしたことを繰り返すことで、以上でご紹介したような様々な国の間で起きた、チャリティの働き、パウロのように自分が弱い時に入りこむ余地ができる、神の恵みにも気づくことができると思います。

 

山田 真人(やまだ・まこと)
NPO法人せいぼ理事長。
英国企業Mobell Communications Limited所属。
2018年から寄付型コーヒーサイトWarm Hearts Coffee Clubを開始し、2020年より運営パートナーとしてカトリック学校との提携を実施。
2020年からは教皇庁、信徒、家庭、いのちの部署のInternational Youth Advisary Bodyの一員として活動。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

nine − four =