サンタ・テレーザ


石川雄一(教会史家)

10月、カトリック教会ではテレジアという名の二人の偉大な教会博士の聖女を祝います。つまり、10日に祝われる小テレジアと、1015日に祝われる大テレジアです。小テレジアと呼ばれるリジューのテレーズは、19世紀フランスに生きたカルメル会の修道女で、20代の若さで早世しました。大テレジアと呼ばれるアビラのテレサは、16世紀スペインに生きたカルメル会の修道女で、宗教改革の時代にカルメル会の刷新をすすめて跣足カルメル会を成立させました。今月はそんなテレジアの名を冠したワイン「サンタ・テレーザ」を紹介します。

イタリア語で聖テレジアを意味する「サンタ・テレーザ」は、「法王のワイン」とも呼ばれるフラスカーティD.O.C.Gです。D.O.C.GというのはDenominazione di Origine Controllata e Garantitaの略で、「保証つき統制原産地呼称」と訳されるイタリアワインの最高位の格付けであるため、フラスカーティD.O.C.Gは、フラスカーティで作られた非常に品質の高いワインであることを示しています。

ローマの南東約20kmに位置するフラスカーティで生産されるワインは、ローマから地理的に近い場所で作られる美味しいワインであったため、古代から現代にいたるまで多くの教皇が愛飲してきたことから「法王のワイン」と呼ばれています。ですが、フラスカーティの歴史はキリスト教以前の時代にまで遡ることができ、なんと古代ローマ神話にも登場するとさえ言われています。古代ローマ時代からローマに住む人にとって身近なワインであったフラスカーティは、中世、近世、近代、そして現代の多くのローマの美食家を魅了してきました。そんなフラスカーティの代表的な生産者であるフォンタナ・カンディダ社による上等なワインが「サンタ・テレーザ」です。

トレッビアーノというイタリアを代表するブドウに加え、マルヴァジーア、グレコというギリシア由来のブドウもっとも、これらの品種もイタリアに根付いて久しいですが……も使用している「サンタ・テレーザ」は、イタリアワインらしいサッパリとした飲みやすさと芳醇さのバランスが良い白ワインです。その辛口の味わいは薄味の料理を引き立て、飲み終えた後の香りは料理の味を引き締める余韻となります。上等なワインでありながら手ごろな値段の「サンタ・テレーザ」を飲みながら、10月に祝われる二人の偉大な聖テレジアを記念してみてはいかがでしょうか。


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