ロヨラへの旅


むろ

「ロヨラに行きたい。」

カトリック信者である妻がそういったとき、無宗教の私は「ろよら」と呆けた声で繰り返すのが精いっぱいであった。

イグナチオ像の横を通り抜けて、ロヨラ城へ向かう

2023年8月、スペインはバスク地方を目的地にした新婚旅行、ビルバオという都市を拠点に各地を巡ろうと計画していた中で、妻が提案したものである。妻が行きたいと言うのならと快諾したが、このとき私が妻から聞いて認識したところは、「何やら山奥にキリスト教の聖地がある」という程度のものだった。

さあ当日、ビルバオからバスを乗り継いで2時間を予定した行程だったが、のっけからバスが遅延して相当やきもきしたものである。ようやくバスが到着しても運転手は英語が通じず、最前列の老紳士が通訳してくれなければ、きっと半べそをかいていたに違いない。

私のスマートフォンはスペインでも電波が通じていたが妻のものは通じていなかった。よって専ら私が道案内をしていたため、私はバスが目的地まで到達するか気が気でなかったのに対して、行きたいといった妻がほとんど眠りこけていたのは当然だったのだろう。

きらびやかな祭壇

誘ってもいないのに途中から腹の中に居座った車酔いとともに降り立ったロヨラは、まさに“ド田舎”と形容するにふさわしく、澄んだ空気を持つ土地だった。そのバス停からほど近いところに、最終目的地であるSantuario de Loyola、通称“ロヨラ城”は存在する。

歩き出すとすぐにその威容が目に入る。ともすれば山中には場違いな荘厳さを持ったその建築物は、近づくにつれ圧倒的な存在感を放つようになった。いつの間にか私の中から車酔い氏は立ち去っていた。

まさに圧巻の一言であった。微細な彫刻に装飾された巨大な聖堂入り口は、無料で案内もなく中に入るのを若干ためらわせるほどだった。大聖堂に入ると、まず目に飛び込んできたのは光り輝く祭壇である。この時すでに私は、スペインでいくつかの聖堂を観光していたが、その中でも飛びぬけて光り輝いていたように思う。また周囲を見渡せば次々と素晴らしい像が目に入る。そして上を向けば、ドーム状の天井に、これまた美しい天井画と彫刻がひしめき合ってこちらを見下ろしている。信者ではないため全ての装飾の意義を理解することはできなかったが、それでも2時間かけて訪れる価値は間違いなくあると、この時感動したのを覚えている。

美麗な装飾で埋め尽くされた大聖堂の天井

それから、大聖堂に隣接するイグナチオ・デ・ロヨラの生家に入った。入場すると各部屋を見学でき、その後に聖人イグナチオの生い立ちを解説するジオラマがあった。私などは無学ゆえ、ぱっと見ただけでは何のことやら理解ができなかったが、宗教音楽を専門にする妻が各所で解説してくれたためにとても興味深かったとともに、博学な妻に脱帽しきっていた。

昼食は近くのカフェで軽く済ませたが、ここに来てよかったと、妻に感謝していた。しかしロヨラ城以外に観光できるところはなく、何せ片道2時間かかるものであるから、昼食後はそのまま帰途についた。

帰りのバスも行きと同じ路線。ビルバオに帰れることが間違いないバスの中で、今度は私も妻と一緒に心地よい眠りについていた。

 


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