Doing Charity by Doing Business(4)


山田真人

前回の記事では、「第三の場所」という言葉を使って社会学的に教会の役割を考えてみました。その中の具体例として、典礼における侍者(カトリック教会のミサで司祭の手伝いをする人のこと)という役割が子どもたちに与える教育的な影響も、考察しました。

今回の記事では、その「役割」という言葉を、会社経営における「ミッション」という言葉に置き代え、非営利団体の経営と経済について、教会的な側面を入れつつ考察していきます。

 

経営の中のミッション

リーダーシップコンサルティング代表の岩田松雄さんは、『ミッション:私たちは何のために働くのか』という著書の中で、「そもそも、企業は何のために存在し、利益を出す必要があるのか」と考えることそのものが、ミッションを考えることだとしています。そして、「ミッションは、自らで見いだし、考えることこそ価値がある」としています。その「価値」とは、例えば作業員が車を作る際に、金属の部品を繋げて「パチッ」と火花を散らした瞬間に産まれている、と表現しています。つまり、製作の過程がどんな形であれ、部品を繋げるという目的を達成し、その瞬間が光輝いていればそれが「価値」であるということです。

ミッションとは、製作過程をマニュアル通りにこなすのではなく、その目的を豊かに達成することによって達成されるのだと思います。教会の侍者も、確かに典礼書通りの動きをすれば、役割は果たせるでしょう。しかし、その中で子どもたちが輝くのは、それを通して自信が付いて教会共同体への所属を実感するという、過程で生まれる価値においてだと思います。この生まれる「価値」を、経営であれば「利益」と呼んでおり、これを実現することがミッションです。

 

非営利団体(NPO)の考えるミッション

非営利団体は、必ずミッションステートメントを掲げ、その内容に沿った資金調達を実施し、社会全体に報告をする義務があります。私が代表を務めているNPO法人せいぼのミッションステートメントは、「学校給食で飢餓を無くし、教育を通して子どもたちの未来を作ること」、それを通して「チャリティ文化を日本に構築していくこと」です。それを成し遂げる過程の中で、輝いているのが、私たちが現地の人々から仕入れたコーヒーが寄付者に渡り、その人の共感と笑顔が出る時です。もしくはその販売計画を立て、実践することで社会的な学びを深める学生たちの姿がある時です。

こうした価値を、NPOは寄付収入として受け取り、最大限ミッションのために使用します。それがNPOにとっての利益になり、教育や購買者の笑顔が価値になります。

 

教会が考えるミッション

長野清泉女学院にて、ソーシャルビジネスを実施するMobellについて講演する筆者。

初めてNPOを経営学の中に入れた経営学者として、ピーター・ドラッカーがいます。彼の『断絶の時代』(1969年)の中で、断絶の最終段階(三段階目)として、「多元的組織社会」を挙げています。その社会は、三つに分かれていて、それらは「企業、行政、NPO」となっています。企業は世の中の人が役に立つと考えるものを作り、金銭を得ます。行政は社会に対してセーフティネットを提供し、そしてNPOは、社会のあり方を定義し、社会と人々の絆を作るとしています。

それでは、この中で教会はどんな場所になるのでしょうか。「ミッション」という言葉は、弟子たちに「全世界に行って、すべての人に福音を告げ知らせなさい。」(マルコ福音書16章15節)といったイエスの言葉の中の文脈で、「使命」と翻訳されます。現代の「全世界」では、上記でお話したような企業、政府、NPOなどがたくさん存在しています。その中で、自分の本当の「使命」を見つけて、自分自身も付加価値を社会に与えていける人物になるためには、教会の内部で教えられるカトリックの教え以外にも、多くの要素と連帯しなくてはいけません。

 

外部機関との連帯(カトリック教育の例)

最後に、私がNPO法人せいぼとして、カトリック学校の先生方に対してご提供させて頂いた授業内容、「外部機関との連携」についてお話しします。宗教教育においては、探究学習や総合的探究の時間などへの対応が、担当者の少なさのため困難な場合があります。その際には、外部で実際に活動をしている団体に依頼し、進めていくことも可能です。

イグナチオ教会でのコーヒー提供の様子

例えば、NPO法人せいぼは、生豆を提供しているアタカ通商、営業費用を負担している英国通信事業者Mobellとの協働で、アフリカのマラウイの給食支援を実施しています。そのビジネスの中にカトリック学校の学生が入り、コーヒーの販売計画、実践などを通して関わることで、関連企業と触れ合うことができます。

サレジアン国際学園のある生徒は、創立母体であるサレジアンシスターズの国際ボランティア組織VIDESの活動から社会福祉に関心を持ち、その後マラウイの社会福祉の一つである給食支援にも関心を持ったことで、NPO法人せいぼにも関わってくれるようになりました。
その彼女はイグナチオ教会の英語コミュニティにコーヒーを提供する場にも、ボランティアとして来て下さっています。

こうして、企業、行政、NPOを始めとする外部団体と繫がりながら、自分のミッションを見出していく。そしてその働きを、どこにも属さない教会が後押しできるような形が、社会の中で教会ができるミッションの果たし方かもしれません。それを通して、精神的な土台としての信仰が育まれることを、期待していきたいです。

 

山田 真人(やまだ・まこと)
NPO法人せいぼ理事長。
英国企業Mobell Communications Limited所属。
2018年から寄付型コーヒーサイトWarm Hearts Coffee Clubを開始し、2020年より運営パートナーとしてカトリック学校との提携を実施。
2020年からは教皇庁、信徒、家庭、いのちの部署のInternational Youth Advisary Bodyの一員として活動。

 


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