裸足になって


人は誰しも夢に向かって生きています。その夢が実現しつつある時、ふとしたことで夢が夢と化し、不幸のどん底に至った時、どんな気持ちになるのでしょうか。それでも生き続けなければならないか、前を向こうとする少女の物語「裸足になって」をご紹介します。

北アフリカのアルジェリアは、内戦が終わったといっても、その傷は癒えきっておらず、不安定な社会が続いています。バレエダンサーになることを夢見て、日々バレエに打ち込むフーリア(リナ・クードリ)は、バレエのレッスンをする傍ら、清掃員のアルバイトをしつつ、真剣に踊りと向き合い、穏やかに暮らしていました。

しかし、ある事情からばくちに手を出し、そのことが原因で悪い男に階段から突き落とされ、大ケガを負ってしまいます。

傷とマメだらけの足の痛みに耐え、足にテーピングをしてまでトゥーシューズを履いて必死に踊っていたフーリアは、骨折によって踊れなくなっただけではなく、声まで失ってしまい、その現実を受け止めきれずに茫然自失としてしまいます。

やっとギブスの取れたフーリアは、リハビリ施設に通い始めます。そのリハビリ施設で出会ったのは、彼女の経験をしのぐほどつらい目に遭って心を壊してしまった女性たちでした。理不尽なテロの暴力、重い病、居士の身の上など、聞いているだけで胸が張り裂けそうになる苦難を乗り越えてきたのです。

一方で、フーリアと母サブリナ(ラシダ・ブタクニ)は、フーリアにケガをさせた男を取り締まるように警察に相談しますが、うまくいきません。警察が宛てにできないとわかると、地元で人権弁護士と言われる女性に相談しますが、なかなかうまくいきません。

ある日、リハビリ施設で遠足がありました。そこで踊ってみせたフーリアに見せられた女性たちは、「あなたダンサーなのね。わたしたちにダンスを教えて」と頼みます。こうしてフーリアは新しい夢に進もうとします。

ところが、世界を夢見て、外国に移民として出ようとした友人ソニア(アミラ・イルダ・ドゥアウダ)が溺死体として発見され、またまたどん底へと突き落とされてしまいます。

フーリアに襲いかかってくる悲劇はこれだけではありませんでした。次々と襲ってくる辛い目にフーリアはどのように修羅場を乗り越えていくのか、政情不安定なアルジェリアで、傷つく女性たちの運命は、そしてふたたび“生きる”情熱を取り戻していくフーリアの姿をぜひ映画館に足を運んで観てください。

修羅場を乗り越え、復活したフーリアが見せる驚くほどの強さにあなたも胸を打たれるに違いありません。恐怖に負けることなく、裸足で命を燃やして踊るフーリアの姿からあなたにも希望の光が見えるのではないでしょうか。

中村恵里香(ライター)

721日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

公式H Phttps://gaga.ne.jp/hadashi0721

スタッフ

製作総指揮:トロイ・コッツァー /監督: ムニア・メドゥール

出演: リナ・クードリ、ラシダ・ブラクニ、ナディア・カシ

配給:ギャガ 原題:HOURIA99分/フランス・アルジェリア/字幕翻訳:丸山 垂穂

©THE INK CONNECTION - HIGH SEA - CIRTA FILMS - SCOPE PICTURES FRANCE 2 CINÉMA - LES PRODUCTIONS DU CH'TIHI - SAME PLAYER, SOLAR ENTERTAINMENT

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

nineteen − 2 =