Doing Charity by Doing Business(3)


山田真人

前回の記事では、ワールドユースデイの準備会で訪れたリスボンでの体験をもとに、ヨーロッパと日本のカトリックの姿の比較を通して、日本独自のカトリック教会のあり方について考えてみました。

また、その具体的な活動者としてのカトリック学校、NPOについてお話しました。

そのため、今回もカトリック学校や教会が持つ教育的付加価値について、考えていければと思います。まず、ご参考として私が幼少時に、カトリック教会の侍者(司祭の手伝いを祭壇でしている人のこと)として、典礼に関わった経験を通して、典礼が持つ教育的な付加価値を考えてみます。次に、高校生たちが学校の中で実施している活動をさらに具体的にご紹介することで、そこでの司牧的意味を考えてみます。

 

典礼の持ちえる教育的な意味

司祭の前で、二人のチームワークで香炉と香舟を使いこなす小学生

私は、出身のカトリック赤羽教会で、小学校2年生から大学3年生まで侍者を務めました。

それまでは、正直教会に行く意味が良く分かりませんでした。しかし、侍者を始めて具体的にミサの中で活躍できる場所が与えられると、子どもながら教会に来る人や、神父様の役に立っているという感覚が芽生えました。

その時は、教会の役に立っているという大きな規模ではなく、その場にいる人々、共同体の一部に自分がいて、与えられた一つの役割を果たすことで一致しているという気持ちだったのだと思います。

今考えれば、それが使徒たちの共同体である教会共同体の一員であることで、神への奉仕に繋がっていると考えることもできます。しかし、多くの人にとってはそのような教会論的な思考よりも先に、コミュニティ意識が先にくると思います。

教会というコミュ二ティは、学校でもなく家でもない場所で、世代を越えた多く人々が集まる「第三の場所」だという認識が、多くの人にあると考えています。

 

「第三の場所」としての教会

具体例としてご紹介した私自身は、幼児洗礼と言って、親の影響で生後すぐに洗礼を受け、カトリック信者になりました。従って、社会的な立場としての「小学生」と、家での家庭の中の自分、そしてそれ以外に素直にカトリック信徒的なアイデンティティが表現できた場所が、教会の侍者だったのかもしれません。

こうして、私たちは日々の生活の中で、様々な自分の姿をバランスよく体現することで、安定して生きることができるのかもしれません。

ミサが終わると、一斉にそれぞれの使った道具を片づけてくれる侍者の子ども達

「第三の場所」という言葉を最初に使用したのは、社会学者のレイ・オルデンバーグで、 “The Great Good Place”(邦訳は『サードプレイス:コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』。原題は “The Great Good Place: Cafes, Coffee Shops, Community Centers, Beauty Parlors, General Stores, Bars, Hangouts, and How They Get You Through the Dayとなり、出版は1989年)の中での表現です。私たちは、決められた会社のオフィスではなく、カフェなど自分で決めた場所で、積極的に建設的な働きをすることで、単に会社の一部として静的に存在しているのではなく、もっと自ら決断して動く個人としても、自分を意識することができると思います。

教会の典礼の場所を、カフェと同じにしてはいけないかもしれませんが、共通点はあると思います。典礼も、香炉を振る人、鈴を鳴らす人など、しっかり一人ひとりの子どもに役割があり、ミサの中で特に注意すべきこと、果たすべき責任がありました。それと同時に、会衆の姿を見て、自分が教会の一員であることも意識していたと思います。

 

カトリック学校と「サードセクター」としてのNPO

現在、私はNPO法人せいぼの代表として、カトリック学校と協働させて頂いています。その中で課外活動の一部に参画することがあります。

宮崎県の日向学院では、Your Bible Projectという課外活動があります。その中では自分が授業などで扱った聖書の箇所を具体的な活動の中で考えていくことが意識されています。

マラウイ人スタッフとのオンラインミーティングを実施する日向学院の生徒

日向学院では、課外活動で有志の学生がフェアトレードの背景などをNPOのスタッフから学び、その仕組みを理解した上で、実際にチャリティ型商品の販売を行っています。フェアトレードと聞くと、チョコレートやコーヒーのパッケージに書かれているラベル(マーク)を思い浮かべた方が多いと思いますが、日向学院が扱うマラウイ産のコーヒーには、そのラベルが添付されていません。ただし、農園の生産方法がマラウイ現地のフェアトレード認証を持っているため、現地の農園には直接フェアトレードのプレミアム(商品に対する付加価値)が提供され、共同体の発展に役立っています。

こうしたことは、ビジネスを取り巻く実際の仕組みに触れないと、気づくことができない部分です。具体的な社会現場と抽象度の高い聖書の言葉をしっかり繋ぎ合わせるために、ビジネスと政府機関に対する「サードセクター」と呼ばれるNPOが果たせる役割は大きいと思います。

以上のように、NPOや教会がそれぞれの立場で「第三の場所」になることによって、大きな教育的価値が産まれることが分かります。私たちはこのように、社会学的な視点からも、信仰の具体的な姿を見ることができるのかもしれません。今回も、「信仰を違った角度で見る」ことに繋がる内容になれば幸いです。

 

山田 真人(やまだ・まこと)
NPO法人せいぼ理事長。
英国企業Mobell Communications Limited所属。
2018年から寄付型コーヒーサイトWarm Hearts Coffee Clubを開始し、2020年より運営パートナーとしてカトリック学校との提携を実施。
2020年からは教皇庁、信徒、家庭、いのちの部署のInternational Youth Advisary Bodyの一員として活動。

 


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