なくしてしまって初めて大切だったと気づくことがあります。それは大切な友人であったり、自分にとっての宝物かもしれません。そんな大切なものを失って初めて自責の念にとらわれた少年を描いた映画に出会いました。
ベルギーの田舎町に住む花卉農家の息子のレオ(エデン・ダンブリン)と幼馴染のレミ(グスタフ・ドウ・ワエル)は、昼は花畑や田園を走り回り、夜は寄り添って寝そべるなど、24時間365日ともに時間を過ごしてきました。親友以上で兄弟のような関係だった2人は、13歳になり、同じ中学校に入学します。入学初日、ぴったりとくっついて座る2人のようすにクラスメイトは「付き合ってるの?」と質問を投げかけます。「親友だから当然だ」とむきになって答えるレオですが、その後も周囲にいじられるようになり、レオは、徐々にレミから距離を置くようになります。
それまで、毎日一緒に登校していたにもかかわらず、ある朝、レミを避けるようにレオは、一人で登校します。自分を置いて先に登校したことにレミはひどく傷つきます。2人はその場で大喧嘩になってしまいます。その後、レミを気にかけるレオでしたが、仲直りすることができず時間だけが過ぎていったある日、課外授業にレミの姿はありませんでした。心ここにあらずのレオは、授業の終わりに衝撃的な事実を告げられます。それは、レミとの突然の別れでした。
移ろいゆく季節のなか、自責の念にかられるレオは、誰にも打ち明けられない想いを抱えていました。
レオの悲しみを浮き彫りにするように夏、2人が駆け回っていた花畑は、晩秋になると、翌年に備えて掘り返されていきます。そして冬を越えた畑には新しい苗が植えられ、夏にはまた花が咲いていく姿には、残酷でもありますが、救いも感じられます。
現代社会の生きづらさから来るメッセージをこめたこの作品からレオとレミの姿は自身の投影と語るルーカス・ドンの言葉に「 レオというキャラクターからは他人が彼らの友情に性的なものとして捉えることに恐怖を感じてほしいという思いがありました」とあります。「その一方で、レミは自分自身に忠実で“自分らしく”生きようとした人たちを代表するキャラクターです」と語っています。
私たちは一人では生きていけません。友情の大切さと、周囲の人たちに打ち明ける勇気が必要です。喪失と再生の物語をぜひ映画館に足を運んで観てください。
中村恵里香(ライター)
7月14日(金)より全国ロードショー
公式HP:closemovie.jp
公式Twitter&Instagram:@closemovie_jp
スタッフ:監督:ルーカス・ドン/脚本:ルーカス・ドン、アンジェロ・タイセンス
キャスト:エデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワエル、エミリー・ドゥケンヌ
2022年/ベルギー・オランダ・フランス/104分/原題:Close|字幕翻訳:横井和子/配給:クロックワークス/STAR CHANNEL MOVIES
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