対談の宝庫 『あけぼの』遠藤周作対談集が示すもの


AMOR編集部

遠藤周作というと、小説、歴史小説、聖書に関する著作などの業績が中心ですが、もう一つの大きな活躍の場が月刊『あけぼの』誌(聖パウロ女子修道会)上での対談集でした。往時、同誌そのものの象徴とも感じられた企画です。今回、そのバックナンバーを調べ、その実績の一覧表をまとめてみました。

『あけぼの』1984年11月号。

【対談1:遠藤周作連続対談】

【対談2:日本人の生活とキリスト教】

※クリックでPDFが開きます。

二つのシリーズがあります。一つは、1979年2月号から1981年12月までのおよそ3年間の連載(全33回)。これはダイレクトに「遠藤周作連続対談」と銘打たれています。第1回の対談相手は、作詞家の阿久悠(1937-2007)。当時超売れっ子の作詞家との対談ということで歌謡曲の作詞の極意に関する話になるのかと思いきや、テーマは「子供の人権について」。当時56歳の遠藤本人も、開口一番「阿久さんとぼくと、子供と教育について話すのかと思ってびっくりしてね」と語り、対談がスタートしています。

二つ目のシリーズは、1983年7月号から1989年6月号まで満6年の連載(全72回)。全体として「日本人の生活とキリスト教」と銘打たれています。最初の2回の対談相手が同年生まれのカルメル修道会の奥村一郎神父(1923-2014)。日本人の精神性とキリスト教の霊性を根本テーマとするこのシリーズの意気込みを示す人選となっています。

多彩なテーマの展開と対談相手は一覧表が示すとおりですが、このなかで、哲学者の松本正夫氏(1910-1998)との対談は、昭和のカトリックの歴史を二人の体験を通して覗かせてもらうタイムトラベルのような内容です。英文学者でもあり神学者でもあるイエズス会の高柳俊一神父(1932-2022)との対談における“ずれ”感も興味深いものがあります。

『あけぼの』1984年11月号の誌面より。

毎月対談を掲載するという編集部の苦労が忍ばれる企画の中には、さまざまな思想の宝庫があります。会話体のことばの中で深く難しい問題や内容が語られるだけでなく、本人や対談者の人柄も生き生きと現れてくるという、対談ならでは醍醐味は失せることがありません。一部は単行本になってもいますが、対談の生き生きとした臨場感は、やはり掲載誌面を超えることはありません。

2014年に休刊となった『あけぼの』誌の一時代を形作っていた遠藤周作対談集。それは、この「AMOR 陽だまりの丘」の成立背景にも見える高い嶺であり、その使命と視野と雰囲気の大切な先輩です。今後も、参考と刺激にしつつ、客観的にも大いに顧みられ、研究されていくことに期待したいと思います。

(今回、『あけぼの』のバックナンバー調査にあたってはオリエンス宗教研究所にお世話になりました)

 


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