見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界


ヒルマ・アフ・クリントという画家をご存じでしょうか。20世紀初頭、抽象画の世界を作り出したというカンディンスキーやモンドリアンよりも早く抽象的絵画を描いていた画家がいました。その人がヒルマ・アフ・クリントです。

1862年スウェーデンの裕福な貴族の家に生まれたヒルマは、海軍で海図作成の士官だった父親の指導の下、さまざまなことを学びます。その後、王立美術院で美術を学び、卒業してから当時の女性としては珍しい職業画家として伝統的な絵を描き、成功を収めていきます。

一方で、多感な青春時代に霊的世界や神智学に関心を持ちます。その意識は1880年に妹が亡くなったことでより強くなっていきます。

神秘主義に傾倒した彼女は、独自の表現の道を歩き始めます。同じ思想を持った4人の女性芸術家と芸術集団「5人(De Fem)」での活動を始めます。この時期1年間で110点もの抽象画を描いたといいます。そのような中で、人智学協会のルドルフ・シュタイナーとの出会いがありますが、彼女の抽象画は認められません。その後、4年間彼女は絵を描くことをやめています。

ヒルマはその後、82歳まで生き、絵を描き続けます。死を前にして、甥にすべてを遺産として残しますが、その遺言には、自分の死後年間は彼女の絵を展示することをしないように言い残します。

さまざまな美術評論家や芸術家、科学史家、ヒルマの甥の妻、ヒルマの甥の子などの証言と、ヒルマ自身が残した文章により、ヒル マ・アフ・クリントの姿が描かれていきます。

なぜ、1906年から書き始めたであろう抽象画がこれまで世に出なかったのか、彼女は死後20年間絵を公開することを拒んだのか、今まで一度も個展をしていないというのは本当かなど、紐解かれていきます。

ぜひ、映画館に足を運んで観てください。ヒルマ・アフ・クリントの絵の世界に引き込まれていきます。

中村恵里香(ライター)

 

4月9 日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー

公式ホームページ:https://trenova.jp/hilma/

 

監督:ハリナ・ディルシュカ/撮影:アリシア・パウル、ルアーナ・クニップファー/編集:アンチェ・ラス、マリオ・オリアス、ハリナ・ディルシュカ

出演:イーリス・ミュラー=ヴェスターマン、ユリア・フォス、ジョサイア・マケルヘニー、ヨハン・アフ・クリント、エルンスト・ペーター・フィッシャー

アンナ・マリア・ベルニッツ

声の出演:ペトラ・ファン・デル・フォールト

2019/ドイツ/94 分/英語、ドイツ語、スウェーデン語/英題:Beyond the Visible Hilma af Klint/配給:トレノバ/後援:スウェーデン大使館

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

eighteen + 1 =