「一家こぞって楽しめる雑誌」を目指して


山内堅治(聖パウロ修道会司祭/『家庭の友』編集長)

月刊誌『家庭の友』が創刊されたのは1949年(昭和24年)。厳密に言えば、印刷・納本されたのが、1948年12月25日付となっている。終戦後すぐのことで、創刊された年(1949年)は聖フランシスコ・ザビエルが来日して400周年の時でもあった。

『家庭の友』が創刊された理由は、第一号の最後の所(32頁)を開くとよく分かる。そこには、次のように記されている。

「クリスマス、新年おめでとうございます。街頭にはんらんする、思わしくない雑誌を見るたびに、『なんとかして、一家こぞって楽しめる、やさしいカトリック雑誌を出さなければならない。大人はもちろん、子供たちにも読めるのが必要だ』と、いつも痛感しました。この希望が、ようやく実現されて、ここに『家庭の友』が発刊されたわけです。したがって、本誌は深い教理の問題や長文にわたるものは避け、できるだけ内容の平易さと豊富さをはかる方針です。あわただしい、きびしい世相の中にあって常に神に向かっての前進であるべき、皆さんの信仰生活に、いくらかのうるおいをお与えできれば幸いと思います」と。

「一家こぞって楽しめる、やさしいカトリック雑誌」と記されている。雑誌を発行したものの、執筆者を探すのにとても苦労したことを先代の編集者から聞いたことがある。最初の頃、イエズス会の荻原晃師(広島教区長)や上智大学教授の岳野慶作氏がよく協力してくれたようだ。岳野氏は、実名で書いた時もあるし、黒崎慶二というペンネームで書いてもいる。執筆者に困った時には、他のペンネームも使い、一人で三つの原稿も書いたこともあるというエピソードを聞いたこともある。経費削減、その一方で著者開拓に全力を尽くしていたのだろう。

創刊から今年で72年になる。編集長も何度も交代し、執筆者もずいぶんと代わってきた。時代と共に、家庭環境も変化してきた。同時に、発行部数の低迷、読者の紙離れ(本離れ)など、いつの時代でも厳しい状況にさらされているような気がする。

今は、テレビの時代からインターネット、スマホ、SNSなど、種々の媒体が存在する。そんな時代にあって、雑誌が持つ使命はなんだろうかとつくづく考える。マイナス面を探すときりがないが、プラスの面はなんだろう。例えば、じっくりと物事を考えたい人のため、読書が好きな人のため、著者を開拓するため、執筆者が聞き続けたものを一冊の本にするためなど、いろいろなことが考えられる。雑誌のプラスの側面を大事にしたらよいのかもしれない。

今、社会では孤独、差別、虐待、自死など、さまざまな問題を抱えている。その根底には家庭のひずみ、ゆがみなどが存在しないだろうか。雑誌がそうした課題の一助になると嬉しい。

こうしたことも踏まえ、現在、次のようなページ作りに励んでいる。

*表紙は、バチカンの「オッセルヴァトーレ・ロマーノ」と契約して、教皇の写真を使っている。

*「おでかけ TomaP」は、聖パウロ会の大川修道士が書いている。トマは彼の修道名で、修道院で起こっている珍事、近隣のお店などについて、興味深い視点で書いている。

*「詩編の輝き」は、白浜定市氏が提供してくれた写真をベースにして、それに合った詩編のことばを入れている。フランシスコ会訳が味わい深いので、その訳を利用している。

*「改めて、教会について考える」と題して、森一弘司教が執筆している。来年度は、「キリスト教は、なぜ、日本社会に浸透しないのか?」といった内容で考察していく。

*「全国の司祭館から」は、教区司祭、修道司祭、宣教会の司祭たちが日ごろ感じることや教会の特徴などを執筆している。

*聖パウロ会の澤田豊成神父が使徒パウロの書簡について解説している。今は「キリストこそわたしたちの平和」と題して、エフェソの教会への手紙について解説している。

*東京教区の稲川圭三神父が「『神さまがあなたと共におられます』と祈る」と題して執筆している。以前は、聖書のたとえばなし、カトリック入門などについてであったが、今は、家庭、教会など、ご自身の体験からくるものを執筆している。

*「なんでも質問箱」は、読者から受けた質問をもとに、典礼学者や聖書学者などが回答している。日常、疑問に思っていることを平易な表現で回答してくれている。

『家庭の友』2021年12月号

*聖パウロ会の山内堅治神父(私)が、「潜伏キリシタンの里」と題して執筆している。長崎教区にある教会について、実際に足を運び、感じたこと、教会の足跡などについて執筆している。

*井口貴志氏が「弱さを祝福する霊性」と題して執筆している。いのちの尊さの視点に立ち、種々の問題について考えていく。最初の掲載から25年くらい経過している。

*モンテッソーリに関連したページは歴史が長い。50年ほど掲載しているので、この雑誌ではいちばんかかわりの深いものである。現在、ミラノ在住のマリアーニ綿貫愛香さんが執筆している。

*長崎教区の川口昭人神父がイラスト・文を提供している。これまでキリシタン関連、教皇などを取り上げ、現在、流配キリシタン物語を掲載している。

*花田えりこさんが「母の手♥ほっこり手作り」と題して、親子で楽しめる作品を作っている。そろそろ100回になろうとしている。

たくさんの執筆者がいるが、雑誌制作にあたり、できるだけ平易な表現、内容に心がけている。「一家こぞって楽しめる、やさしいカトリック雑誌」。いつも原点に立ち返って、多くの人にみことばを伝えたい。

 


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