教育新時代:これからの子どもたちはなにを学ぶか(14)


やまじ もとひろ

この連載では「変わりつつある英語教育」をテーマに、中学校や高等学校における英語教育のシステムが様変わりしてきた現状を追いかけています。

これまで新しい英語教育のあり方として、東京都の公立中学校で行われることになる「英語スピーキングテスト」、「ダブルディプロマ校(日本の学校と海外の学校、両校の卒業資格を得られる学校)」、つづいて「長期留学校(日本の学校に在籍中に1年程度海外の学校に留学できる学校)」をご紹介してきました。

そして、今回からご紹介するのは、最近耳にすることが多くなった「国際バカロレア認定校」です。文部科学省(文科省)が提唱するグローバル教育の最先端をいく学校群とされていますが、国内では、その数はまだまだ増えてはいません。

国際バカロレア認定校は世界158の国と地域に広がり、日本の小中高にあてはまる学校が、世界で5000校を超えています。日本でも、文科省の後押しもあって、近年認定を受ける学校が増えています。インターナショナルスクールなどを含めると167校、それらを除く、学校教育基本法第1条校の規定に則っている学校、つまり日本の学校卒業の資格との両方を取れるのは小中高合わせ51校となっています。(2021年3月30日時点、文科省IB教育推進コンソーシアムによる)

 

国際バカロレアってなに?

たとえば東京都立国際高校には、すでに国際バカロレアに認定されて6年を数える国内では草分け的な存在の国際バカロレアコースがあります。しかし、その存在は、一般にはあまり知られていません。

そもそも、それ以前に「国際バカロレアってなに」「どんな学校?」という疑問を持つ人が多いと思います。

「国際バカロレア」は、英語では International Baccalaureate と書きます。International が「国際」、まあ直訳です。Baccalaureate「バカロレア」は、大学入学を認める認定資格のことです。

つまり、国際バカロレアは、「国際的に通用する大学入学資格」を指します。スイスの非営利団体が運営し、認定した各国の学校で行われている教育システムです。国際バカロレア資格を取得すると、世界の多くの国の大学に進学するチャンスが大幅に広がります。

 

国が推し進める国際バカロレア認定校

かつて、日本には国際バカロレアの認定校はインターナショナルスクールを除いてはありませんでした。国際バカロレア資格を取得しようとする若者は、海外から日本にやってきている外交官などの子弟が主でした。

逆に海外で働いている企業人が、その子弟を海外の大学に進学させるために、国内のインターナショナルスクールに通わせて国際バカロレア資格を取得させる例もありました。

しかしいま、文科省は、子どもたちの将来に向けて「グローバル人材の育成」を高く掲げています。その観点から、我が国における国際バカロレアの普及・拡大を強く推進し始めたのです。2015年からは国際バカロレアと日本の学習指導要領に則した教育をともに学べるよう特例措置も施しています。

都立国際高校・国際バカロレアコースの授業風景(同校HPより)

また、日本の高校2~3年生にあたる学生が学ぶ、国際バカロレアのディプロマ・プログラム(卒業認定学習、16~19歳、以下DP)の授業では、各科目とも英語で行なわれますが、日本語で履修できる教科が大幅に増えた「日本語DP認定校」もできて、国際バカロレアを学ぶ環境が身近になってきました。こうしたこともあって国内の国際バカロレア認定校数は徐々に拡大しています。

国際バカロレア認定校となった高校では、1年生を準備期間とし、2~3年生でDPに則った、合計6つの科目を履修する必要があります。内訳は、大学や社会人として必要となる専門分野の知識やスキルを、大学入学前の段階で準備しておく観点から、6科目のうち、3~4科目を上級レベル(各240時間)、その他を標準レベル(各150時間)として学習します。これらの高校では、日本の学習指導要領と組み合わせて授業を行ないますので同時に高校の卒業資格も得ることができます。

高校の教程にあたるDPとは別に、ほぼ小学校に対応したPYP(プライマリーイヤープログラム、3~12歳)、また、ほぼ中学校に対応しているMYP(ミドルイヤープログラム、11~16歳)という教程があります。

さて、次回は国際バカロレア認定校の大学進学事情と、同認定校での学びの実際に触れて、この連載の結びとしたいと思います。

[つづく]

やまじ もとひろ
教育関連書籍、進学情報誌などを発刊する出版社代表。
中学受験、高校受験の情報にくわしい。

 


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