中村恵里香(ライター)
日本は災害立国といっていいほど災害の多い国です。そんな中にあって、いつも前向きに、自らも被災者でありながら、災害に遭った人に優しい目を向けている女性がいます。
私たちは2020年11月にあるプロジェクトで熊本県人吉市に行きました。そこで訪ねた方は、農村レストラン「ひまわり亭」と「食・農・人 総合研究所 リュウキンカの郷」を運営する本田節さんです。
2016年の熊本地震の時には、キッチンカーを調達し、困っている人のために仲間とともに被災地に温かい食事をと、もっとも被害の大きかった益城町へ何度も出かけています。
そして、今回の球磨川の水害が起こります。この水害は民家が2メートルも水没するという大きな被害です。そのとき、本田さんの運営する「ひまわり亭」も被害を受けています。ひまわり亭の後片付けは、明日からでもと思っていた本田さんに、今日やらなければ復旧は困難になると周囲の人たちが駆けつけ、泥で埋まったレストランを清掃してくれたといいます。
ひまわり亭は、50代から80代の女性たちが立ち上げたレストランです。周囲からは、「被災したのに人のために動くなんて」といわれたそうですが、「非常時の今こそ、つながりを生かして動かなきゃ」と思ったそうです。
新型コロナウイルスの流行で、避難所での炊き出しはできず、在宅非難を続ける被災住宅、それも車も通れないようなところにキッチンカーで回り、温かい食事を届けました。
本田さんはグリーンツーリズムのセミナーを開くなど、人材育成に取り組んだ人でもあります。また熊本地震の時に培った人脈で、全国から多くの避難物資も届いたといいます。コロナ禍でうかがえないからこそ、何か支援をと驚くほどの支援物資が届きました。また、ボランティアも圏内からしか受け入れられない状況下で、リュウキンカの郷をボランティアの宿泊所として使い、延べ250人ほどが訪れています。
今も本田さんの支援活動は続いています。「ピンチをチャンスにするためには、ネットワーク、フットワーク、チームワークが大切だと分かった」といいます。本田さんの周りには、常に自らの役割に応じて自ら動くすてきな仲間がいます。
リュウキンカの郷やひまわり亭でのお食事をごちそうになって、私が思ったのは心温まる温かい食事とともに、人の優しさでした。私にとっては、まるで教会に集う人々のようにも見えました。
今、熊本の水害とひまわり亭の活動を絵本にしようとクラウドファンディングが立ち上がっています。ぜひ、応援してください。