世界のSIGNIS、SIGNISの世界


平林冬樹(イエズス会司祭)

世界のSIGNIS少史

SIGNIS JAPAN(カトリックメディア協議会)の規約ができてから、昨年で15年を迎えました。

SIGNIS JAPANが加盟する国際団体SIGNISは、六つのグループ地域に属す各国のSIGNISの連合体です。六つの地域とはアフリカ、北米、南米、太平洋、アジア、ヨーロッパであり、ベルギーに全体の事務局を置いています。運営のために、世界会議と地域会議で選出された理事が、SIGNIS全体の 政策や意思の決定を行います。

2001年まで、カトリック教会の世界的な広報組織として、国際カトリック放送協議会(UNDA)と、カトリック国際映画・視聴覚メディア協議会(OCIC)が活動していました。日本にもそれらの支部がありました。

1990年代を機に、メディアの状況が世界的に変化し、双方の明確な境界線がなくなってきました。そこで両者は、2001年11月に統合し、教皇庁広報評議会(当時)の指導のもとでSIGNIS WORLDとして新たに組織されました。

 

日本のSIGNIS

日本では、1989年にUNDAが解散しました。他方OCICは「カトリックメディア協議会」として、日本カトリック司教協議会の広報委員会、後のコミュニケーション委員会の一翼を担い、司教団と密接な関係を保っていました。当時は、アメリカで開発されたインターネットが日本でも急速に普及し、有望なコミュニケーション手段として脚光を浴び始めた時代です。そのころ、濱尾文郎横浜司教(後 枢機卿)や糸永真一鹿児島司教、東京大司教であった白柳誠一枢機卿が、広報活動の推進に熱心でした。東京都江東区潮見に日本カトリック会館が落成したとき、広報部は、4階に広々としたオフィスを構え、部長以下7人の常勤職員が配属されていました。オフィス内には、TV番組を収録する調整室を備えたスタジオが併設され、心のともしび運動YBU本部が制作する日本テレビ系の地上波番組「心のともしび」を収録していました。またカトリック教会と諸宗教が協力して計画した衛星放送の新しいチャンネルに対して、司教団は多額の分担金を拠出して発足の準備を進めました。

1990年代後半になると、司教団の実務機関であるカトリック中央協議会の組織の簡素化が図られ始めました。中央協第三次機構改革です。その理念は、教団中央、すなわち日本司教団が取り組んできた諸活動を各教区の自主性に委ねるというものでした。信徒使徒職の推進や青年層への宣教司牧といった活動は、各教区に任せ、司教団全体としての活動は、社会系に集中するという結果になりました。その流れの中で、コミュニケーション委員会は、1998年6月に廃止されてしまいます。しかしその後も、カトリックメディア協議会は、中央協広報部と連携し、地道な活動を続けることができました。長く広報部長の職にあった女子パウロ会のシスター長谷川昌子さんの傑出した功績を忘れることができません。いっぽう、カトリックメデイア協議会は、2001年1月15日に、SIGNIS JAPANと改名し、日本カトリック映画賞の授与を続けるなど、さらなる発展をめざしました。

2004年に定年退職した長谷川広報部長の後任となった司祭は、大企業での広報の経験があるとは言え、弱視というハンディのためか広報への適性が疑問視されるなど、司教団等に影響力を発揮できませんでした。しかし、その紹介でSIGNISに加わった土屋至氏の尽力により、SIGNIS JAPANは、「教会とインターネット」セミナーを開催するなど、現在の活発な活動に至っています。

話は前後しますが、SIGNIS JAPANは、2005年の規約制定直後に着任した新任部長の方針で、司教協議会の外に出されてしまったのです。また中央協の広報体制も大幅に縮小されました。SIGNIS JAPANは、人的にも財政面でも司教団の支援を得られない完全な民間団体になったのです。この損失は大きかったように思います。司教団からの、年30万円の協力金は打ち切られ、ほぼフルタイムで事務を担当してくれていた広報職員の協力も、事務所も失いました。にもかかわらず、現在のSIGNIS JAPANが進んでいる方向は、時宜にかなっていると思います。

 

SIGNIS JAPANへの提言

世界のSIGNISのポリシーに照らし、日本のSIGNISが、司教団の外に位置する現状は不自然ではないでしょうか。以前のように司教団に広報委員会を設け、そこに、カトリック新聞始め、月刊誌、単行本を含めたカトリック出版界などを結集し、総合的なメディア戦略の立案や実行を手がけることが理想であると思います。SIGNISは、その中に場を占めれば良いのではないでしょうか。

当面のSIGNISには、以下のことを提案したいと思います。

(1)全国的な主要メディアの中枢で働くカトリック信者を発掘し、SIGNIS JAPANのメンバーになっていただく。

(2)後継者の育成

(3)ウェブサイトのコンテストを実施し、現在続けているセミナーと連動させる。

(4) 日本カトリック正義と平和協議会と同じく、SIGNISを司教団に属する団体とするよう働きかける。

このような当面の目標と、さらにしっかりしたポリシーをもって、SIGNIS JAPANが、いっそう力強く発展していくことを陰ながら、切に望んでやみません。

 


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