彼女は夢で踊る


ストリップ劇場というと、私たち女性には縁のないところと思われがちです。でも、そこで踊る人間は女性です。私は若き日に知人の男性たちととある田舎町でストリップを観に行ったことがあります。本当に何もない田舎町で、居酒屋で飲んだ後、することもなくなったので、男性陣がストリップでも観に行こうという話になり、気の進まなかった私に観るだけの価値はあると説得されて行ったのですが、踊る女性の美しさとともに、そこに魅入られていく男性たちの動きの方が気になって、とても興味深かったのを覚えています。そんなことを思い出させてくれる映画に出会いました。その映画は「彼女は夢で踊る」です。

広島の繁華街の外れにある実在の老舗ストリップ劇場「広島第一劇場」が舞台の物語です。この劇場は、何度も閉館の危機にさらされながら存続している劇場です。その劇場が閉館する最後の公演が始まる前から、閉館までの物語です。

閉館が迫り、最後のステージを飾るためにストリッパーたちが劇場にやってきます。閉館を迎えいおうとしている中で、社長の木下信太郎(加藤雅也)は、初めてこの劇場に足を運んだ日、魅せられた踊り子サラ(岡村いずみ)との日々がよみがえってきます。サラと出会ったことで、劇場の従業員となり、その後社長となり、今日閉館までの日々が走馬燈のようによみがえり、その半生を記していくというのがおおよそのストーリーです。

ストリップというと、淫靡な世界を思い浮かべるものですが、決してそんな世界を描いたものではありません。踊り子にも劇場の従業員にもそれぞれに人生があります。その人生のさまざまな姿が描き出されている映画です。

また、踊り子が舞台に向かう際に降りる階段の壁には無数のキスマークがついています。このキスマークはどうしてできたのか、なぜここにキスマークがあるのかは皆さんが劇場に足を運んで、この映画をご覧ください。

切ないまでの男女の愛情と消えゆく劇場の姿が見るものを魅了していきます。そして地域に密着し、消えゆくものを残すとはどういうことなのかを語りかけています。

この作品はすでに広島で公開され、多くの女性を魅了した映画だそうです。なぜ女性を魅了するのかはぜひ映画館に足を運んでみてください。そして、この原稿を書いている間に朗報がもたらされました。スペインのマドリード国際映画祭にて、審査員賞を受賞したということです。

(中村恵里香、ライター)

 

10月23日(金)より新宿武蔵野館ほか、全国順次公開

 

公式ホームページ:http://dancingdreams.jp/
FaceBook :https://www.facebook.com/yumedeodoru/
Twitter :https://twitter.com/dancingdreamjp

 

監督・脚本・編集:時川英之/企画:横山雄二/撮影:Ivan Kovac / Jeremy Rubier/プロデューサー:時川英之、田辺裕美子

出演:加藤雅也、犬飼貴丈、岡村いずみ、横山雄二、矢沢ようこ

挿入歌:「Creep」作詞・作曲 Radiohead/「恋」作詞・作曲 松山千春

配給:アークエンタテインメント

協力:広島㐧一劇場 広島フィルムコミッション/配給・宣伝:株式会社アイエス・フィールド/制作プロダクション:TimeRiver Pictures株式会社

Ⓒ2019 映画「彼女は夢で踊る」製作委員会/2019年/95分/PG-12

 

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

one × three =