FATAがやってきた 2


あき(カトリック横浜教区信徒)

 子犬(マルチーズトイプードルのミックス)を引き取る日までの約1週間。 その間に名前をつけようと、いろいろな候補があがったが、なかなかしっくりこない。 ある時妻が、「FATAはどう?」(我が家では妻に主導権がある)「えっ?なにそれ?」「いろいろ調べたんだけど、ちいちゃいでしょ。なんかイタリア語で妖精のことをFATAっていうみたいなの。ファンタスティックのFATA。ちいちゃいし妖精みたいでしょ」

たしかに、小さくて静か(当時は)弱弱しい感じだったので、「そうねぇぇ。いいんじゃないの」ということで、FATAと名付けられた子犬は、その後、雄のようにやんちゃな雌犬に変貌していく。

話を戻して、FATAを家に連れて帰る前に、ぜひ話したいことがある。

FATAはあまりほえない静かな子だった。マルプーは毛もあまり抜け替わることもなく、比較的利口な犬種で初心者には扱いやすいということだった。犬を飼う説明を店員の方から受けた。そして最後に1枚の紙を渡されサインを求められた。

「このわんちゃんは今日からあなたの家族です。一時のかわいいという気持ちだけで飼わないでください。」

その後、テレビの「天才! 志村どうぶつ園」その他で捨て犬が多いこと、ショップで飼い主に巡り合わなかったわんちゃんの話を聞くにつけ胸が痛む。

正直言ってFATAが家に来るまでは、それほど実感していなかったことだが、ペットだった犬が野犬になり人間を恐れ、牙をむく。目は凶暴だが、しっぽをまたの間に挟んでいる。よほど怖い目に合ってきたのだろう。毛もカットしていないので、だまになり足の指に絡みつく。目もあけられないものもいる。そんな犬たちを見るにつけ、人間と共に寄り添って世代を受け継いできた犬たちの寂しさを意識するようになった。

わたしもショップでFATAを購入した人間である。犬の売買ルーティンに乗ってFATAはやってきた。もしかしたら、FATAにも兄弟姉妹がいただろう。せめてFATAだけは大事に育てよう。そう思った。

 

FATAを抱くと暖かい。血が通っている。

ぺろぺろと腕を舐める。

FATAを抱き外出用ケージに入れて車に乗せた。そしてなるべく振動させないように運転すると、FATAは小さな足で踏ん張っていた。

家につき、ケージを見ると、おしっこでぬれていた。帰ってFATAの居場所を作り、ケージ中に入れて、目隠しの布で覆った。自分の世界を作って落ち着かせようと思った。

しばらくすると、どことなくブーゥンと匂ってきた。「あれっ」布をとると、おしっこシートの上に大きな出来立てほかほかのうんちがあった。

動物を飼うということは、まずはこれが基本と実感した。子犬は生きている。

そしてこれから毎日うんちの世話をすることとなる。


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