ワーカーズコープという言葉をご存じでしょうか。日本語でいうと、協同労働の協同組合ということだそうです。発祥したヨーロッパでは、働き方の一つとして定着している働き方なのだそうです。その内容は、働く人や市民がみんなで出資、民主的に経営し、責任を分かち合い、人と地域に役立つ仕事を起こす協同組合ということです。
このシステムは、私たちが努める一般企業とはまったく異なります。一人ひとりが労働者であると同時に経営にも参加します。一人1票の対等な立場で行う新しい働き方です。主な展開としては、まちづくり、関連事業、介護、子育て、就労支援、公共施設の管理運営などなどです。
そのワーカーズコープの面々は、2011年3月に起こった東日本大震災の被災地で2011年7月から仙台に復興本部を置き、仕事おこしの取り組みを進めてきました。その中で、2016年2月から2017年12月までの22カ月を記録した映画が『Workers 被災地に起つ』です。
これまで東日本大震災を扱ったドキュメンタリー映画は数々上映されてきました。家をなくし、家族を亡くし、悲惨な思いをしている人々を追って作られた映画がほとんどだったように思います。でも、今日ご紹介する『Workers 被災地に起つ』はそれとはちょっとおもむきを異にします。被災者だからこそ分かる必要な仕事は何か、自分たちで考え、自分たちで仕事を始めるのです。
「放課後子どもたちを預かってもらえる場所を」と大槌で始まった居場所作りは、地域共生ホーム「ねまれや」になります。子どもの一時預かりだけではなく、高齢者のたまり場になり、子どもも高齢者も、生涯の有無にかかわらず、地域の人々が誰でも足を運び、一緒に過ごす場になっています。
地元の豊かな資源を活かして地域復興を目指し、2012年3月に宮城県亘理町で始まったのが「産直 はま道」です。そこでは農園を展開し、生産者の会を作り、野菜や加工品を提供することで始まりましたが、その後野菜や加工品を売る場として、「ともにはま道」を展開し、障害のある人の就労を軸に食堂や手作り弁当の販売などにまで活動の幅を広げています。その「ともにはま道」の所長、池田道明さんは、震災前、仙台空港の飛行機整備士をしていました。震災で衝撃的な体験をします。その体験から「経営者=労働者」というワーカーズの仕組みと出会い、今に至っています。
その他、宮城県登米市、気仙沼市などの活動も紹介しています。このワーカーズの取り組みは、新しい就労の形になるということが見ている私たちにも伝わってきます。困っていたら、作っちゃおうよと声を発する人がいて、その声に呼応することができる人がいる、震災後の新しい就労の形がさまざまな人の応援に繋がっていることがすごく私たちを勇気づけてくれるドキュメンタリー映画です。ぜひ、映画館に足を運んで観てください。
中村恵里香(ライター)
監督:森 康行/企画:田中羊子 横山哲平/ナレーター:山根基世
配給:一般社団法人 日本社会連帯機構、日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会
製作著作:日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会・センター事業団
2018年/89分/HD/16:9/カラー/日本/ドキュメンタリー
■映画公式HP:http://workers2-movie.roukyou.gr.jp
■Facebook:https://www.facebook.com/workers2
■Twitter:https://twitter.com/Workers2M
2018年10月20日、ポレポレ東中野ほか全国順次公開