時に誰もが、人知れず悩みや哀しみの夜を過ごすことがあり、今夜もこの世界の何処かに、悲嘆の人がいる。人が人を救うことは容易(たやす)くないが――もし、信仰があるならば?と、呟(つぶや)いてみる。深夜の暗闇から「ひかりの朝」へと転換されてゆく〈信仰の目〉をもって、生きること。夜明けの青空に薄っすら浮かぶ、イエスの澄んだ瞳が〈私をじっとみつめている…〉と心から信じる時、悲嘆の人はゆっくり、立ちあがる。
(服部 剛/詩人)
※今回の詩は、斎藤菜穂子著『霧の町を訪ねる日』(土曜美術社出版販売)に掲載されています。