アート&バイブル 8:聖カタリナの神秘の結婚


ロレンツォ・ロット『聖カタリナの神秘の結婚』

稲川保明(カトリック東京教区司祭)

図1:『レカナーティのお告げ』(1534年頃、レカナーティ市立絵画館所蔵)

ロレンツォ・ロット(生没年1480頃~1556)はベネツィアに生まれました。家族や友人、弟子も持たず、イタリア各地を放浪しました。存命中は作品に評価が与えられず、経済面でも苦労が絶えなかったというエピソードが残っています。晩年はロレートの修道院(ロレートは「聖母の家」があることで有名な町。特集16「聖家族崇敬が生まれた状況」参照)にて穏やかに暮らしたといわれています。彼の作品で比較的知られているのは、お告げの絵(図1)です。マリアが驚いて逃げ出そうとしているような姿は当時としては奇想天外な描き方で、それゆえ奇妙に感じられていたことでしょう。

 

【鑑賞のポイント】

本日、紹介する作品『聖カタリナの神秘の結婚』(図2)では、アレクサンドリアの聖カタリナに指輪を渡す幼子イエスの姿とそれを敬虔に拝跪(はいき:ひざまずいて拝むこと)して受け取るカタリナの姿が描かれています。アレクサンドリアの王女カタリナは、美貌と博識でもって名高い女性でした。

図2:『聖カタリナの神秘の結婚』(1523年、ローマ、国立古典絵画館所蔵)

彼女は、砂漠の隠者によってキリストの花嫁に迎えられると告知されます。しかしそのとき洗礼を受けていなかったのでキリストに拒まれます。カタリナはその後、洗礼を受けて心の平安を得て、キリストと“神秘の結婚”をします。この“神秘の結婚”は幼児のキリストがカタリナに結婚指輪を授ける姿で表されます。カタリナは王女であるため、通常は王冠を被り豪華な身なりで描かれています。

カタリナは時のローマ皇帝に見初められ求婚されますが、キリストの花嫁たることを誓った彼女は、異教徒である皇帝との結婚を拒みます。皇帝は100人の哲学者をカタリナのもとへ遣わして議論させ、彼女の信仰を打ち破ろうとしますが、逆に哲学者たちが論破され、キリスト教に帰依することとなりました。

怒った皇帝はカタリナを刺のある車輪に縛りつけ、車裂きにしようとしますが、天使が現れて車輪を粉砕してしまいます。最後には、彼女は斬首され、殉教します。古代から中世にかけて尊敬を受け、祭壇画などに数多く描かれ、愛された聖女です。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

11 − 7 =