コロナの時代だからこそ、できることを……分かち合いの新たな方法を模索する


漆原比呂志

コロナの影響による様々な環境の変化の中で、最も強く実感したことは、これまで私が関わってきた活動というものが「人々と現場で、直接関わることそのものに価値を置いてきたのだ」ということです。

 

どうチャンスに変えるか

JLMM(日本カトリック信徒宣教者会)という海外に信徒のミッショナリーを派遣するグループの活動も、東日本大震災の被災者支援のためのCTVC(カトリック東京ボランティアセンター)の活動も同様に、コロナ感染防止のため実際に現場に行くことができない、集まれない、交流できないという状況は、活動の根幹やアイデンティティを大きく揺るがすものでした。

例えば、JLMMで年間6、7回程度は実施していたカンボジアスタディツアーは、日本からの航空の便がなくなり、カンボジア側では日本からの渡航者の上陸拒否という措置が続いているため、すべて中止となりました。国際協力イベント、報告会、映画会、コンサート、バザー、各地教会訪での活動紹介など、例年行ってきた活動も一切できません。

CTVCでも月に1、2度は東北被災地、特に福島各地での被災者・避難者の方々との交流イベント実施や訪問、打ち合わせに出かけていましたが、どれも中止となり、東京で行ってきた講演会もこれまでの形式ではできなくなりました。

再開した識字教室で学ぶカンボジアの子どもたち

このような局面では特に、リアルに人と会い、語り合い、ともに活動を行うことの尊さをあらためて感じるわけですが、このコロナの状況がこれからどのくらいの期間続くのかを誰にも予想できない中、では実際いま、どう行動するかを問われることになりました。

従来の活動に戻るまでの一時的な取り組みというよりは、これからの時代に向けて、この状況をきっかけに関わり方や活動の手段自体を新しい形態に変えていくことが求められているように思います。もちろん、リアルな出会い、触れ合いの素晴らしさに勝るものは無いということが前提ですが。

そこでいま、「何ができなくなったか」よりも、「何ができるようになったのか」を意識的に考え、行動に移していくことが大切だと思います。

JLMMでは、カンボジアに継続してミッショナリーを派遣してきましたが、今回3月末に派遣者2名が緊急帰国し、その後任期を終え、1992年の現地での活動開始以来、初めて派遣者がゼロの状態になりました。カンボジアでも春からコロナ対策としてすべての学校が休校したため、私たちの運営する「子どもの家」という識字教室も活動を休止していました。

さて、この厳しい状況を、どうチャンスに変えるか……。

カンボジアでこの数年間取り組んできた課題は、現地スタッフによる活動の「ローカル化」でした。1998年から継続している、首都プノンペン郊外の貧困地域における支援活動において、日本の支援への依存をできる限り減らし、現地のスタッフが運営の主体を担うようにすることが課題でしたが、意識の面でも現実的には大変難しかったのです。今回、日本人派遣者が不在となる事態を余儀なくされ、いよいよ現地スタッフたちが自分たちで活動を運営するという形にシフトしつつあります。いままでは私も、カンボジア出張時にしか交流することがなかった現地スタッフと、オンライン会議ツールのZoomを活用してほぼ毎週ミーティングをすることで、顔を合わせながら、日々の活動や運営をリモートで協力しながら進めていくシステムが確立されました。

日々の諸活動や経理などの事務について現地スタッフ、日本事務局スタッフ、もと派遣者の全員で話し合いながら、「子どもの家」の活動も段階的に再開しています。10月上旬にはコロナ禍でさらに生活困窮となった165家族に向けて、緊急食糧支援を始めました。プロジェクト地において、現地スタッフのみで動く経験を積み重ねながら、念願だった活動のローカル化を達成しつつあります。

 

新たなミッションとして

さて、JLMMの日本事務局では、様々なイベントなどが中止に追い込まれる中で、世界と日本の人びとをつなぐミッションをどう展開するかが課題でした。そこで、元派遣者やスタッフの中には現在も海外で活動しているメンバーもいるので、オンラインでつなぎ、各国のコロナによる影響とその課題に向けた取り組み、そしてJLMMのテーマである「ともに生きる」ということをどう考え、どう実践しているのかをインタビューする企画を行いました。YouTubeにてJLMMの公式チャンネル「トモニイキルチャンネル」を立ち上げ、カンボジア、スペイン、イタリア、アメリカ、カナダからメッセージを届けました。

各国とオンラインでつなぐ トモニイキルチャンネル(JLMM)

YouTube企画は何時でも、世界中のどこからでも視聴することができ、かねてから活動報告の有効な手段として検討されてはいたものの着手できずにいましたが、今回のコロナによって一気に企画として立ち上がりました。今後もカンボジアでの支援活動報告やハンディクラフト、特産品の紹介など、順次展開していきます。

CTVCでは、東日本大震災の被災者・避難者や現地で支援活動を行っている方々を東京に招いてお話を伺う講演会「福島から語る」も、9月に初めてオンラインで実施しました。オンライン版第1回目は福島県南相馬市で活動する作家の柳美里さんの講演で、ZoomウェビナーとFacebookライブを組み合わせ、当日は海外や全国各地の150名の方にご参加いただきました。その後も視聴が可能なので(こちらからご覧ください)、現在(10月11日)の時点での再生回数は1,397回、多くの方々にご覧いただいています。これもリアルな講演会ではこれだけたくさんの方々にアクセスしていただくことは難しいと思いますので、新たな手法のメリットを感じます。

コロナの影響により、必要に迫られて、主にオンラインによる様々な手法を試みるようになりました。これらの実践では、いつでも世界のどこからでもアクセスできるというメリットを通して、支援活動や交流をより多くの人々と分かち合うことができます。こうした可能性を、ひとつひとつ協力しながら皆で切り開いていくことが、このコロナの時代に生きる私たちに与えられたミッションなのかもしれません。

 

うるしばら・ひろし
一般社団法人JLMM事務局長。カトリック東京ボランティアセンター(CTVC)事務局長。上智大学非常勤講師(ボランティア論)

 


コロナの時代だからこそ、できることを……分かち合いの新たな方法を模索する” への1件のフィードバック

  1. 「思いが一緒なら、環境が変わっても柔軟に環境に対応すればよい」ということですね。

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